>  > 国会で成立寸前の新しい法律「ヘイトスピーチ対策法(仮称)」を山口祐二郎が解説する
ヘイトスピーチハンター・山口祐二郎が珍しく本業に戻った

国会で成立寸前の新しい法律「ヘイトスピーチ対策法(仮称)」を山口祐二郎が解説する

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ネット番長たちのヘイトスピーチ


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写真はイメージです


 現場のヘイトスピーチもそうだが、同じく深刻なのがネット上のヘイトスピーチである。ネット上のヘイトスピーチは毎日のように、大量におこなわれている。ネットを見れば、ヘイトスピーチが溢れている。デマがさも真実のように歪められ飛び交い、誤解されている。生活保護費不正受給、公共料金滞納、凶悪犯罪などはすべて在日朝鮮人(など日本人以外の民族)の仕業だといわんばかりの言説で満ち満ちているのである。一部の日本人もおこなっていることなのに。

 それでどれだけ、差別をされる当事者が嘆いていることか。しかしながら、ネット上のヘイトスピーチも取り締まる法がない。現在、ネット上はヘイトスピーチが垂れ流しの状態であるのだ。差別を受ける当事者がネット上で自らの属性を検索した時に、何を想うのか。想像するだけで、胸が切り裂かれる気持ちになる。

 ネット上のヘイトスピーチに対しても、ヘイトスピーチ対策法は効力を発揮されなければならない。


ヘイトスピーチ対策法への期待


 今までは、差別意識から起こした犯罪、ヘイトクライムが発生しても警察の対応は不十分なものであった。とんでもない暴力事件があってでもある。

 私は日本人であるが、2014年8月にヘイトスピーチをされながら在特会等100人以上に飯田橋でリンチをされ肋骨骨折などの重傷を負わされた。私は完全に無抵抗で非暴力を貫いたのにも関わらず、警察はすぐには逮捕をしなかったのだ。2ヶ月以上経過してから逮捕をしたのである。

 また、2016年3月には『維新政党新風』街宣参加者の右翼団体から、私がやっているグループ『全憂会議』のメンバーが派手に殴られた。警察の目の前でボコボコにされているのに、現行犯逮捕をされなかった。映像がバッチリ撮影されていたので、マスコミが報道し、国会で問題となった後に犯人は逮捕をされたのだ。

 どう考えても、おかしいだろう。それに逮捕をされても、ヘイトクライムではなく単なる暴行罪や傷害罪扱いであるのだ。ヘイトスピーチ対策法ができることで、ヘイトクライムが起こった際に厳しく取りしまるようにならなければいけないはずだ。
 

それでも、これは大きな前進だ


 ヘイトスピーチに反対をする者たちの中でも、今回のヘイトスピーチ対策法について賛同しない人間もいた。事実、『社民党』副党首の福島瑞穂さんや、『生活の党と山本太郎となかまたち』共同代表の山本太郎さんなどは、反対票を投じたのだ。

 ヘイトスピーチ対策法の中身が「本邦出身者」「適法に居住する者」と限定していることが争点となったのだ。そうなると、アイヌや沖縄出身者はどうなるのかということになる。また、在留資格を持たない外国人への差別はOKなのかということが問題となった。野党側は訂正を求めていたが、与党側はその要求を呑まなかった。結局、付帯決議をつけることで双方が折り合ったのだ。

 私はこう考えている。この度のヘイトスピーチ対策法可決は、大きな前進である。確かに、100点満点ではない不完全なもので満足のいく内容では決してない。しかしながら、国がヘイトスピーチを許されない行為とし、差別を抑止するスタートダッシュをしたことはまぎれもない事実である。

 これから、みんなで良い法にしていこうではないか。


涙は他人のために流せ


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写真はイメージです


 今回の法案は、実は理念法であり、罰則規定はない。けれども、このような法ができることで、確実に地方自治体は差別抑止に動きやすくなる。警察対応もガラリと変わるはずだ。差別反対なのにも関わらず、ヘイトスピーチ対策法に反対をしている人たちに言いたいのは、マイノリティー、被害者の気持ちを考えているのかということだ。

 私もこんな法などないのが理想だと思う。だが、実際にヘイトスピーチで傷ついてきた被害者がいるのだ。カウンターをしていて、私はいつも限界を感じてきた。私のすぐ隣に、ヘイトスピーチをされて傷ついているマイノリティーの当事者がいたのだ。そのたびに、悔しい気持ちになった。本当に申し訳なくて歯がゆくてどうしようもなかった。

 この法律が可決、施行されることで、今までヘイトスピーチで心をえぐられてきたマイノリティーの気持ちを、涙を、考える日本になっていくことを願うばかりである。




※1 京都朝鮮学校襲撃事件とは、在日特権を許さない市民の会、主権回復を目指す会、チーム関西らのメンバーが、「京都朝鮮第一初級学校の勧進橋児童公園の不正占用に抗議する」として、2009年12月4日に同校の校門前で街宣活動を行い、抗議者側が威力業務妨害罪、朝鮮学校側が都市公園法違反に問われた事件。民事と刑事、どちらの裁判でも争われ、刑事事件の被告として裁かれた在特会のメンバーは、侮辱罪、威力業務妨害罪、器物損壊罪などの罪状で執行猶予付の有罪判決を受け、民事訴訟においても街宣の禁止と計1226万円余の賠償命令を受けた。また朝鮮学校側は、都市公園法違反により罰金10万円の略式命令を受けた。(この項の文責=編集部 wikipedeia「京都朝鮮学校公園占用抗議事件」などを参照した)




山口祐二郎
1985年、群馬県生まれ。歌舞伎町ホストなどを経て、新右翼「統一戦線義勇軍」幹部に。2007年に防衛省襲撃事件、2012年に東電会長宅前断食断水ハンストを起こし脱退。現在は、「全日本憂国者連合会議」議長、「憂国我道会」会長。作家・活動家として活躍。 著書に『ハイリスク・ノーリターン』(第三書館)、『奴らを通すな!』(ころから)がある。
山口祐二郎公式ツイッター https://twitter.com/yamaguchiyujiro