なぜ"並び屋"さんが大量動員されるのか
さまざまなニュース番組、さまざまワイドショー、さまざまなスポーツ新聞、さまざまな週刊誌、どこもやっぱ自分のとこの記者、コメンテーターに傍聴させ、生々しいことを言わせたいのである、書かせたいのである。
もちろん、法廷画家さんにも傍聴席に座ってもらわないといけない。
ニュースに出る「法廷内撮影」は、審理が始まる前の、被告人も証人もいない状態で2分間行われるのみ。審理の様子をテレビが生々しく報じるには、法廷画家さんが不可欠だ。
なわけで、それぞれが何百人かずつ"並び屋"を雇い、あるいは専門業者に委託し、そうして4000人近い大行列になるんである。
こういう人気事件=マスコミ注目事件では、裁判が始まると空席がちらほら見られることがある。
どこかが傍聴券を当てすぎちゃうとそうなるんだね。
それでも裁判所側は、傍聴券を握った者以外、傍聴させない。大したもんである(笑)。
ちなみに、今回の清原被告人の裁判は425号法廷で行われた。傍聴席は42席だ。
ところが3769人に与えられた傍聴席=当たり券は20席=20枚。
記者クラブと、雑誌協会とかなんかそういうのと、証人などのために、22席の"取り置き"を裁判所が認めたってことだ。
ちなみにちなみに、東京地裁には52席の法廷もある。なんと98席の大きな法廷も4つある。
98席の法廷を使えば、22席を"取り置き"しても残りは76席。傍聴券抽選の倍率は約50倍まで下がる。
しかし、チョー人気の事件だから98席の法廷を使う、ということを裁判所は絶対にしない。大したもんである(笑)。
この日は雨天だったが、晴天の日はヘリコプターが何機も頭上を飛び、
「ご覧下さい! 傍聴希望者がこんなに!」
と報じられることもある。
そういう報道を見たら、思ってほしい、あれはほとんどみんなマスコミ自身が雇った"並び屋"さんなのだと。
あ、そうそう、このことも言っておこう。
清原氏に対する求刑は懲役2年6月だったという。
初犯なら普通は懲役1年6月で決まりだ。清原氏は、前科があったの? 何かおそろしく特殊な事情があったの?
だが現時点では、どの報道を見てもさっぱり分からない。
俺が傍聴してれば、なぜ求刑が懲役2年6月だったのか、しっかりレポートしたのに。残念だ。
(取材/文=今井亮一)
今井亮一 プロフィール
いまいりょういち●交通ジャーナリスト/マンガ原作者/作家。著書は『交通違反ウォーズ!』(小学館)、『なんでこれが交通違反なの!? 警察は教えない126の基礎知識』(草思社)、『裁判中毒 傍聴歴25年の驚愕秘録』(角川書店)など多数。
交通違反メインのブログ「今井亮一の交通違反バカ一代」はこちら!http://ko-tu-ihan.cocolog-nifty.com/
渾身の裁判レポート盛りだくさんのメールマガジン「裁判傍聴バカ一代」はこちら!http://www.mag2.com/m/0001035825.html