
現場となった918号室のドア付近。最上階が9階である。(撮影=八神千鈴)
T.Rさんの痕跡をすべて消すため、殺害から1時間も経たずに遺体の切断を始めたのである。
のこぎり、包丁、ナイフを駆使して23日まで解体を続け、着ていた服や連れ去るときに奪ったバッグの中身も細かく切り裂き、それと並行して遺体の部位や持ち物の断片をトイレに何度も流した。トイレで流せない骨は別のマンションのゴミ捨て場やコンビニのゴミ箱に遺棄した。
解体と遺棄をすべて終えるまでにはおよそ2週間かかったが、H.T受刑者はその間も何食わぬ顔で出勤し、マスコミの取材に無関係を装って応じていたのだから背筋が寒くなる。
しかし、どんなに工作したところで現場に残された指紋は雄弁だった。実は事件直後に一度、マンション住人の指紋採取が行われていたが、H.T受刑者は薬品で指先をただれさせてやり過ごしていた。ところが1か月後に再び採取したときは皮膚が回復していたため、逮捕につながったのである。