>  > まるで人間釣り堀! 夏フェスの「ダイバーキャッチ」という拷問バイト
俳優志願四十代独身の日雇い日記

まるで人間釣り堀! 夏フェスの「ダイバーキャッチ」という拷問バイト

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

俳優志望の中年日雇いバイトマイスターが様々な日雇いバイトの驚愕の現場をレポート。今回は夏フェスの地獄バイトエピソードだ!


3月某日(金曜日)


お久し振りです。実は最近、俳優業が忙しいのです。最近はネタバレを防ぐために「どの局の、どの番組」とは明確にできません。昨今の俳優業は、出演契約書に「情報解禁日までSNSなどでの口外禁止」という項目があるので、明らかにできないのです。

ちなみに、今回は1カ月ほどの長期ロケだったのですが、その間、ケータイには単発バイトの案内メールがガンガン鳴っていまして。

ちなみに、私のようなエキストラ的な人間は控え室が大部屋なのですが、同じ時間に複数の者のケータイに着信音が......。 きっと、みんな同じ派遣サイトに登録しているのでしょう。売れない俳優あるあるです。

それはさておき、この季節になると、各地で行われる夏フェスの出演メンバーが徐々に発表されますよね。同時に我々のような日雇いバイトのもとにも夏フェスの警備バイトの勧誘が来ます。

「この時期に?」と思われますが、同日に複数のフェスが開催されることもあるので、各主催者は人材確保に必死で冬から募集します。音楽業界は"先取り"の世界なのです。

だって、夏にリリースする曲は大抵、2月とかにレコーディングしていますよ。だから、TUBEだって、ダウンジャケットを着ながら「夏だね」とか歌っているんです、絶対。クリスマスソングなんて、レコーディングは夏の台風がやって来る頃ですよ。そんなものです、音楽業界は。

natufes-1.jpg

見るのは楽しい夏フェスだが......※写真はイメージ

話をフェスバイトに戻しますが、私は何度か経験していますが、あれほどキツい日雇い仕事はありません! 仕事はいたって単純なんです。『ダイバーキャッチ』といって曲にノリまくってダイブしてくる客をキャッチして、セーフティゾーンにリリースするだけですから。

キャッチ&リリースで釣りをしに行くようなもんですよ。朝7時に集合するところも釣りに行くのに似てますし。あ、釣りのほうが早いか。

さて、集合場所で点呼を取りますが、ここで"天国"へ行けるパスポートをもらえるかもしれないチャンスがあります。それは、作業割り当てで、『パスチェック』という役割になることです。この仕事は、楽屋の入り口で、出入りする人のIDパスをチェックするだけです。基本、座っていられます。超ラク!

なぜ、この仕事があるかといえば、けっこういるんですよ、関係者面して楽屋に潜入しようとするヤツらが。ちなみに、アーティストも着用ですが、時折、忘れる人もいて。コチラも、そのバンドを知らないとメンバーだって分からないじゃないですか? だから、入口でストップをかけられて、「俺を誰だと思ってるんだ!」と怒っているアーティストも多いです。

しかし、90パーセント以上の確率で『パスチェック』は回ってこないので、基本的にはキャッチするだけです。

このキャッチ、体力があればなんとかなる。そう思われる人がいますし、実際に私もそうでした。しかし、数々の"拷問"が待っているのです。

まず、当然ですが、それがヘヴィメタル系のフェスですと、1日中、メタル系音楽を聴くことになります、最前列よりも前の位置で。あの甲高い声でのシャウトを聞いていたら2バンド目で頭痛がしてきます。

しかも、あるフェスなんて朝10時のトップバッターが北欧のブラックメタルですよ! 

きっと


「魔法でお前を呪う」


とか


「呪術で世界を征服する」


って歌ってるんでしょう。英語を理解できていたら、確実に病みますって!

また、メタル系のフェスで気を付けなくてはならないのがお客さんのファッションです。ほとんどの人がブーツですよ。さらにレザー系の服だと、汗を吸って重くなるんです。しかも、トゲトゲのリストバンドをしているじゃないですか? それでバタバタされたら、タマったもんじゃない! けっこう頭皮に突き刺さるんです! 流血バイトになります。

それよりも気になるのが......ニオイですね。夏で大汗をかくのにレザー系の服。たぶん、革なのでクリーニングできないのでしょう。めちゃくちゃクセェんです! 


オマエら夏なんだから、もっと軽装で来いよ! 


そう提案したくなりますね。

これを夏フェスの場合、炎天下の屋外で行うのです。仕事中に脱水症状を起こす者も少なくなく、自分の場合は2リットルのペットボトルを5本に粗塩を500グラム持参して臨みます。これでは日当を2万円近くもらってもワリに合わないと思ってしまいますよね。

もちろん、良いこともあります。お気に入りのアーティストを間近で見れます。時にはトイレで一緒になって連れションできます。まぁ、向こうは何とも思ってないでしょうけど。私の自慢はマリリン・マンソンと連れションしました。

また、最前列で好きなアーティストのライブを聞けるのも良いですが、振り返ってはいけないのです。後ろ向きで感じるだけです。

また、知らなかったアーティストを知る喜びもあります。ただ、後ろ向きで聞いているので、「この女性アーティスト、めちゃくちゃ声がイイじゃん!」と思っても、後日、改めてチェックすると顔が......なんてことも、しばしばです。

アレですよ、スキー場で知り合って、「かわいい!」と思っても、東京に戻って来たら「あれ?」みたいな。あの感じです。あ、そうか、だから苗場で開催するんだ......そう思った次第です。ちなみに、私、今年の夏フェスバイトはパスします。



(文=梅田隆策)