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ヤクザから口座を没収した銀行に裁判所が「合理的だ」とお墨付きを与える

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銀行が口座を解約したのは不当だとして、指定暴力団道仁会(福岡県久留米市)の小林哲治会長ら幹部2人が、みずほ銀行と三井住友銀行を相手に解約の無効を求めた訴訟の裁判で、福岡地裁の青木亮裁判長は小林会長らの請求を棄却しました。青木裁判長は「反社会的勢力に属する者の預金口座は、違法行為への転用や活動資金の管理に利用される危険性がある」と銀行の預金規定にある「暴力団排除条項」の正当性を認めた上で、「条項の追加は合理的な約款の変更に当たり、既存の契約に効力を及ぼすことができる」と述べました。


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写真はイメージです

 銀行の預金規定の「暴力団排除条項」による一方的な口座解約は不当だとして、道仁会の会長と本部長が解約の無効確認を求めた訴訟の判決が3月4日に言い渡され、福岡地裁・青木亮裁判長は「解約は不当ではない」と訴えを棄却した。

 青木裁判長は、反社会的勢力に属する者の預金口座は、「違法な行為に転用される危険性や活動資金の保管先として利用される危険性が常に存在する」とし、反社会的勢力に属さなければ口座が使えると判じた。

 作家の宮崎学氏は、「想定内とはいえ、ひどい判決」と批判する。

「口座だけではなく、保育園から子どもの通園を拒否されたり、高校入学を取り消されたりと家族にまで及ぶ事例が激増している。また、ヤクザとの『交際』を公表されたことで、会社の経営が破綻する例も少なくない。明らかに人権侵害であり、憲法違反と考えている」(宮崎学氏)

 判決には「ヤクザをやめればよい」という主旨の文もあったのだが、宮崎氏はこれにも異議を唱える。

「自治体の多くは暴排条例で『ヤクザをやめてから5年を経過しない者』を『元暴力団員』として排除の対象にしている。この5年間をどう生きろというのか。もちろん5年を経たところで、『元組員』というレッテルははがしてもらえない。そもそもなりたくてヤクザになる者は少数。多くは貧困や差別などの事情を抱え、学歴も職もなく、行き場がなくてヤクザになる。仮にやめたとしても生活できない」(宮崎氏)

 覚醒剤の密売やオレオレ詐欺の事件が後を絶たないことも、暴排の影響があるとされる。

「正業を取り上げられてしまい、覚醒剤や危険ドラッグの密売、オレオレ詐欺や強盗などに手を染めるしかないのが現状だ。ヤクザを排除したところで、『より悪く』なるしかない。ここまで排除が進むと、もう収拾はつかないかもしれない。かつてはなかったことだ」(宮崎氏)

 話題の映画『ヤクザと憲法』でも、こうした行き場のないヤクザの姿をカメラがとらえていたが、宮崎氏の指摘通り、これからはさらに「悪くなる」のだろうか。

(取材/文 熊野水樹)