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裁判所に「犯罪捜査の名に値しない」と一刀両断にされた北海道警察の捜査手法とは

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1997年、北海道小樽市で発生した銃刀法違反事件で懲役2年の実刑判決を受けたロシア人男性が求めていた再審請求について、札幌地裁3日、開始を認める決定をしました。札幌地裁は北海道警による「おとり捜査」を「およそ犯罪捜査の名に値しない」と断罪、道警関係者に大きな衝撃を与えました。


あの「元警部」の重大証言で再審決定?


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写真はイメージです

「ラクダが針の穴を通るよりも難しい」と、なぜか聖書の言葉を引用して困難さが例えられる再審請求ですが、ラクダさんもたまーに針の穴を通れることがあります。

 報道によりますと、「北海道警の違法なおとり捜査で不当に逮捕された」と再審請求していたロシア人の元船員ナバショーラフ・アンドレイさん(46)に対して、札幌地裁(佐伯恒治裁判長)は3日、再審開始を認める決定をしました。

 アンドレイさんは、銃刀法違反で懲役2年の刑を務めて帰国、現在は前科のせいで日本には入国できない状態だそうです。

 裁判長は、道警のおとり捜査を「具体的な容疑のない者に対して、犯意を誘発した。重大な違法性がある」と厳しく批判していて、びっくりです。「犯罪を抑止すべき国家が、自ら新たな銃器犯罪を作り出して国民の生命、身体の安全を脅かした」とも言っています。

 この事件の概要は、アンドレイさん側の弁護士によれば、「銃器犯罪に縁のないアンドレイさんに捜査関係者が拳銃と中古車の交換を持ちかけて、アンドレイさんが父親の遺品の拳銃を持ってきたところを逮捕した」というものだそうです。

 判例によりますと、おとり捜査とは「犯意誘発型」「機会提供型」があり、犯意誘発型はアカンとされています。アンドレイさんの場合も、「中古車と交換してやる」と言われて父の遺品を持ってきただけとのことで、裁判長は「違法な捜査によって得られた証拠に証拠能力はない」「ロシア人男性に無罪を言い渡すべき」と容赦ないです。

 ひどいお話ですが、普通ならこの程度の事件の再審請求は裁判所に認められることはありません。今回、ラクダさんが針穴を通れたのは、「捜査はヤラセでした」と認める元当事者さんがいらしたからです。

 証言したのは、本サイトでもおなじみの稲葉圭昭元警部さんです。この件の顛末を含めて書かれた『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』(現在は講談社文庫)は6月に映画が公開されるそうです。以前から裁判所の感触はよかったようですが、再審が正式に決定した3日には「決まってスッキリした。早く開廷されるといいね」とニッコリ。

 実は、そもそも道警のヤラセ捜査が問題にされたのは、稲葉さんの告発からなのです。3年02月、ご自身の公判でアンドレイさんの件を含めて拳銃押収のヤラセ捜査について供述、当時の小林隆一銃器対策課長ら3人の元上司を名指ししています。

「当時、アンドレイさんを有罪にするために、自分もウソの証言をしたと話したんです。で、偽証で送検されましたけど、不起訴でした。事件当時は道警の人間ですから、道警は偽証をさせたことを認めたくないんです。まだ自分の事件も確定していなかったから、(偽証罪で)刑が伸びるのは正直怖かったけど、面会に来た妻に相談したら、『家は大丈夫だから、自分の信じていることを話して』と言われんです。話してよかった。小林さんは(自殺した同課指導官の)方川東城夫(かたがわとしお)のせいにしていたけど、それは違います。組織ぐるみの犯罪ですよ」(稲葉さん)

 この「組織ぐるみの犯罪」が、再審の法廷で明らかにされることになります。今後の展開にも大注目です。

(取材・文 吉原美姫)