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俳優志願四十代独身の日雇い日記

ある生物学の教授から......秘密アルバイトの全貌

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俳優志望の中年が様々な日雇いバイトを経験。その驚愕の現場をレポートする新シリーズ。今回はある大学教授からの秘密依頼を紹介する


2月某日(日曜日)


今年の冬は暖かく、私のような日雇いバイトで食いつないでいる者としてはありがたいのです。

理由は簡単です。日雇いバイトは、良い条件なんて、そうそうあるわけではありません。良い条件の仕事なんて正社員の方が持っていくもの......それが労働の世界のリアルです。大抵が寒い中での屋外作業でしたり、暖房が効いていない深夜の倉庫で荷卸しだったりします。だから、暖かくなるとありがたいのです。

さて、私は日雇いの仕事を会員登録をしているサイトからの依頼を見て選ぶ。大体がそのパターンです。そして、そこで真面目に働くと、時々、大元の依頼主に気に入られて、連絡先を聞かれて、直接、オファーがあることもあります。

今回もそうでした。しかも、暖冬ゆえのオファーです。依頼主は大学の研究室にいる生物学の教授の方で

『田螺採集』です。

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直接依頼主から届いたメール

田螺......タニシです。そうです、田んぼなどにいる淡水に棲む巻貝です。その稚貝を採集して教授に卸すのです。

本来は春先が"旬"ですが、今年は暖冬ゆえに2月にして発生したとのこと。そこで、メールが来たのですが、いきなり「明日など、動けますか?」と書いてあります。買い取り額は昨年同様でとのこと。すると100グラム1,000円程度です。

けっこう、良い条件に思えますが、田螺の稚貝です。1個1グラム程度ですよ?どれだけの額かという話です。

しかし

"ボーナス"

があるのです。それは、文末にも書いてある『他の生物』です。つまり田螺が棲んでいる用水路で、小魚や水生生物も教授の研究材料であり、自分の生活の糧です。

ちなみに、田螺は千葉県某所の用水路にいまして、溝の壁面に付着しています。そして、これを網で壁面に沿って根こそぎ捕ります。しかし、ポイントがあって、あくまでも優しくです。というのも稚貝なので殻が柔らかく壊れてしまい値段が付かないからです。

結局、次の日は他の日雇いバイトが入っているので、依頼を受けた夕方に行きました。いました!5ミリ程度の田螺の稚貝が!おそらく、頑張れば30分で3,000円になるでしょう。(実際に3,500円でした)ただ、まだ他の生物がいなかったのでボーナスはありませんでしたが......。

おそらく、今後も夏まで定期的に教授から直メールで依頼が来るでしょう。僅かの拘束時間で、それなりの額をいただけるので、自分にとっては良い小遣い稼ぎ、といった感じです。

しかし、失敗もあります。たとえば、2年前のことです。ある用水路に成貝して丸々太った田螺が大量発生したという情報を受けて現場へ行きました。すると、その通り、親指の先端ほどの田螺が8キロほど捕れました。8万円です。詰め込みました、バケツに。しかし、それが田螺にとって酸欠状態でしかなく、その大半が死滅してまして......。今でも思い出すと悔しいっす!

あと、一度、沼地で田螺採取をしていた時のこと。ボーナスポイントの『他の生物』として、魚を捕ったのです。しかし、それ用の水槽が無かったので、田螺のバケツに入れた瞬間のこと。その魚が勢いよくバシャバシャと暴れまして。

最初は「あ、イキがイイなぁ~。こりゃ、教授も喜ぶぞ!」と思ったのも束の間。バケツを覗くと田螺がほとんどいませんでした。どうやら、そこの魚はブラックバスの稚魚だったらしく、餌になってしまったようです。もちろん、自分の手取りは少なくなりまして。

さらに、その魚を沼に離そうとしたら、近くにいた釣り人から「ここではキャッチ・アンド・リリースは禁止だから!」と怒られる始末......。結局、時給にして100円程度の仕事になってしまいました。

今年は田螺でいくら稼げるのでしょうか? 暖かくなるとソワソワする自分です。




(文=梅田隆策)