山形県酒田市のタクシー会社で起きた強盗事件で、山形県警は被害者だった従業員の男を逮捕しました。強盗は男の自作自演でした。逮捕されたのは、山形県酒田市のタクシー会社従業員・佐藤育生容疑者(44)。事件は先月31日の早朝、「事務所に何者かが押し入り、現金51万円が奪われた」というタクシー無線からの通報があり、警察が駆けつけたところ、顔面に粘着テープを巻かれ、手足を縛られた状態の佐藤容疑者が発見された、というものでした。しかし、現場の状況に不審な点もあり、無くなった現金も佐藤容疑者の車から見つかったため、警察が佐藤容疑者を問い詰めたところ、「金に困ってやった。自作自演でした」と自供しました。
逮捕されても借金はチャラにならないのに

テレ朝NEWS「被害者が一転、容疑者に...金に困り"強盗"自作自演」(リンク)
あまりにもずさん過ぎた自作自演。逮捕前に、被害者という立場でこたえたインタビューを観ていても、こちらがハラハラさせられてしまいそうな挙動不審さ。
"演じる"のであれば、もう少しマシなシナリオを頭の中で描けなかったのであろうか。役者経験もないのに、いきなり主演を演じようとするからこうなるのだ。
挙句、何が、「一瞬だったんで......」だ。下手な猿芝居でももちょっとしっかりしたことを言いよるぞ。
だが、この猿芝居以下の演技?に欺かれてしまった方もおられたようだ。人ではない。犬である。警察犬である。かわいそうに、犯人が目の前にいるとも知らず、周囲をくんくんと探索させられ、あるはずのない手がかりを捜させられていたのだ。
だが、これだけ文明が発達しているというのに、えらく原始的な方法をいまだに日本の警察は活用しているのだな。
誤解なきように言っておくが、警察犬が優秀なのは充分承知している。時には空港などで、麻薬を発見することもあるであろう。
だけど、こういった犯罪の捜査は、さすがの警察犬も苦手らしい。犯人の遺留品捜しもなにも、目の前におるではないか犯人が。
そもそも、それくらい警察官でやろうぜ。私には、どうしても警察官が犬の散歩をしているようにしかみえない。
TBS news"i"「強盗事件は自作自演、タクシー会社従業員の男逮捕」(リンク)
ともあれ、本人が「私の演技でした!」と認めたことで、ほぼ事件は解決を見たといっても良いと思われるが、問題は自作自演者の動機である。なんでも消費者金融に借金しており、その末の犯行だというではないか。もしかして、演じて盗んだ金を、借金の返済に充てようとしていたのであるまいな。
それは、あまりにも律儀すぎやしないか。
そんな頼りない動機だから、すぐに自作自演であることを──ヤラセであることを認めてしまうのだ。
逮捕され前科がついたからをといって、こしらえた借金はチャラにならない。なんだったら、ビタ一文まかりはしない。
だったら、前科持ちの借金者より、ただの借金者のほうがよかないか?
借金に困り果て、犯罪に手を染める者が後を絶たないが、塀の中で困るより、まだ借金で苦しんでいたほうが、私はマシではないかと思うのだが、如何なものだろうか。だって、出所後、また借金で頭を悩まさなくてはならんのだぞ。それ以上の負担を抱えてどうするのだ、というのが、私の見解である。
無い袖は振れない、という言葉は、消極的に聞こえるかもしれないが、取り立てる側からしてみれば、存外、怖い言葉なのだ。そうやすやすと犯罪に走ってはいけない。
沖田臥竜
兵庫県尼崎市出身。日本最大の暴力団組織二次団体の元最高幹部。前科8犯。21歳から29歳までの8年間服役。その出所後わずか半年で逮捕され、30歳から34歳までまた4年間服役と、通算12年間を獄中で過ごす(うち9年間は独居)。現在、本サイトで小説『死に体』を好評連載中。