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イスラム国に肉薄した男 報道カメラマン横田徹インタビュー

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『戦場中毒』誕生秘話

──この本自体は2年ぐらい前から書いていたんですか

横田 もともとはアフガンだけの話だったんですね。ある出版社の新人賞のために書き下ろしでちゃんとテーマを決めてやらなくてはいけないと。だから『アフガンの10年』にテーマを絞って書いたんですけど、それが最終選考で落ちました。賞というものがなくなったのなら、生い立ちやリビア革命、海賊など含めた今までのエピソードを全部入れてやろうと。そして怒りに任せてシリアに行ったんですよね。

──そうなんですか?

横田 非常に頭にきて、「一体どうなってるんだ? 本を何冊も出してるプロの書き手や新聞記者が賞を獲ってなにが新人賞だ」と。

──新人賞と冠しているのに

横田 もちろん自分の作品が未熟だったというのもありましたが。私のような者にはチャンスないじゃないかと。仕事も4ヶ月せずに必死に書いていたのでお金も無くなってました。

ちょうどその頃にアメリカがシリアを空爆するかもしれないというニュースを聞いて、これは取材に行かないと怒りが収まらないなと思いました。しかし行ったら、イスラム国に捕まりかけて、イスラム国との関わりが始まるんですよね。

──この本は戦場のルポでありつつ紀行文という側面もあるなと感じました。イラクやアフガニスタンの乾いた空気感というか、土埃の匂いが感じられていいなと

横田 私はそういう本が読みたかったんですよね。私はベトナム戦争時代の本がすごく好きで、開高さん※5とか泰造さん※6とか、近藤さん※7とか多くの傑作がありましたが、近年はワクワクするような本がないじゃないかと。書き手のイデオロギーが固まってるような最初から内容が分かるようなそういう話ばっかり。それで、自分が書く時に、そういうものではなく、かつて自分が面白いと思った本のような作品を書きたいというのがあったんですよ。

※5......開高健。朝日新聞特派員としてベトナム戦争を取材したのをまとめたのが『ベトナム戦記』である

※6......一ノ瀬泰造。フリーカメラマンとしてカンボジアを取材。その後ベトナム戦争も取材した1973年にアンコールワットに行ったあと消息を絶ち。82年に両親によって死亡が確認された。『地雷を踏んだらサヨウナラ』にベトナム戦争の様子が書かれている

※7......近藤紘一。産経(当時サンケイ)新聞にて1971年から74年までサイゴン支局長を務め、75年にベトナムに臨時特派員として再度派遣され、サイゴン陥落を経験。その様子は『サイゴンのいちばん長い日』に書かれている

──では『アフガンの10年』の段階からこのテイストでというのが

横田 そうなんです。出来ればちゃんと書きつつも旅、冒険記みたいな感じにしたいという、編集をしてくれたノンフィクション作家の藤野さんの構成のバランスが良くて、あんまり脱線したらすぐ戻されて、すごく面白く書こうとしたら直されて、上手く舵取りをしてくれて。

戦争に興味を持つきっかけに、この本がなってくれればいいなと。もっと深く知りたければ著名な作家さんや大学の先生が出してる著書を読めばいいなと。私が知ったかぶりしたところですぐに化けの皮剥がれるし(笑)。私は現場で見たことしか書けません。


アフガンでアメリカは勝ったのか?

──告知映像の中でリビアの民兵がピックアップトラックに機関銃やミサイルを積んで、即席の砲台を作ってました(2:12秒あたりから)が、すごい印象的でした。かたやアフガニスタンで従軍取材されたアメリカ軍はものすごい潤沢な資金でタリバンと戦っていた。その対称的な戦いの姿をご覧になってどう感じましたか

横田 あまりにもハイテク過ぎるとローテクに対応出来ないというところ。とんでもない差じゃないですか、ピックアップトラックに自分で機関銃取り付けてくる。手作り爆弾とか。それに対して無人機や衛星から監視できる。

そんな素人のような集団を相手に戦争するにはコストがあまりにも違いすぎるし、誘導爆弾を使って何千万円もかけて壊してるのがピックアップトラック1台とか、50万円とか100万円のものに対して数千万円かけているわけで、じゃあそれで勝っているのかというと、まるで勝ってないと思う。

戦争というのはコストを考えないといけない。なんでもそうですけど、そこが合わなかったら失敗じゃないですか、いくらいいもの作ろうが。果たして勝っているのかなと。

──アフガニスタンで米軍はタリバンと戦っていたコレンガル(通称:死の渓谷)から撤退するじゃないですか、大量の弾薬を使い結果として撤退と、それはハイテク過ぎてローテクに対応できなかったと

横田 それもひとつありますけど、あそこに村人が住んでいる自体でアメリカは負けているんですよね。人が住んでいるところで撃ち合いなんか出来ないし、それをわかってタリバンは戦いを仕掛けてきます。住民がいなければ絶対負けることはありません。人が住んでいれば無差別に攻撃は絶対にできないし、アメリカ軍は本来、ここに住む村人を豊かにしてやろうという思いがありました。

──そうなんですか? そこの渓谷に住む住人の暮らしを豊かにしようと

横田 住んでいる人はほんとうに中世みたいな暮らしをしているんですね。道路作ってあげて、そうしたら君らも金儲かるからって、だけどもそこに住んでいる人にはどうでもいい話で。彼らはずっと同じ生活をしているわけで、なんでこっち(アメリカ)はこんなに貢献してるのに向こう(タリバン)に協力するんだと

──一方的な善意の押し付け

横田 そう一方的な「アメリカみたいに豊かになりたいだろ」みたいな、ハッキリ言って住民はそんなこと望んでいないし、そもそも間違えてるんですよ戦略が。

アメリカの『レストレポ前哨基地』というドキュメンタリー映画がまさに全部というか1年かけて密着して全部撮ってあるんですよね。それで迷惑ばかりかけて人殺しちゃうし、でその度にクレームがきてで米兵も殺されるし、なんで俺たちはこんなにやってるのに協力しないんだと、住民に対して怒りをぶつけるし、あれでもうダメだなっていうのは、誰がみてもそう思いますよね、うまくいくわけ無いと。

アフガニスタンでタリバンと米軍が死闘を繰り広げたコレンガルの1年間を追ったドキュメンタリー映画『レストレポ前哨基地』