>  > わらにもすがる思いはわかる わかるだけに......
元極道の異色作家・沖田臥竜のニュース解説  「プロ」はニュースはこう読む!

わらにもすがる思いはわかる わかるだけに......

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

重い糖尿病を患う7歳の男の子にインスリン注射を受けさせずに死亡させた疑いで、栃木県警は下野市の会社役員、近藤弘治容疑者(60)逮捕しました。近藤容疑者は両親から200万円以上の報酬を受け取り、寝かせた駿君の周りにろうそくを立てて呪文を唱えたり、体に手をかざしたりしていました。調べに対して近藤容疑者は「自分が死なせたのではない」などと容疑を否認しているということです。


病に苦しむ子供を放置して殺した自称龍神


 自らを風神と名乗ろうが、雷神と名乗ろうが、神の子と名乗ろうが本人の勝手である。近藤のように自らを龍神と名乗ることも別に構わない。ただ、それで誰かに被害を与えたり、命を落とす結果を招いたとなれば、無論、話は別である。

 語弊がある言い方かもしれないが、自分が特別な能力を宿していると「錯覚」している祈祷師、占い師は少なくない。だが、そういう人間でもちゃっかり、自分の事に対してだけは、現実を見ていたりする。

 その現実という部分を持っていたからこそ、近藤という自称「龍神」も、宇宙とコンタクトをとりながらも社会で60年間も生息できていたのだろう。

 じゃなきゃ、とうの昔に精神病棟で隔離されていたはずである。

okita_news_1203_01.jpg

糖尿病男児殺害事件、両親「わらにもすがる思いで」 TBS news"i"(リンク

 本当に自分で特別な存在だと心底、信じこんでいたのであれば、あの奇怪な名刺を配り歩く必要なんてないではないか。ほっといても、龍神の力により、自分で言いふらさなくとも、龍神の力に導かれて、困っている人たちのほうから尋ねてくるものではないのか。

 それとも、龍神にはそういった営業?の能力はないのだろうか。

 直感が偶然重なったり、たまたまカンが当たってしまってたり、運良く物事が上手く運んだりしてしまったりしていくうちに、「ワシってもしかしたら、特別と違うのか。ムムムム、そういえば、何だか誰かの声も聞こえてくるぞ!」となったとしても、それはただの錯覚か、思い込み、もしくは精神的な病気である。

 だってそうだろう。近藤は生まれてこのかた、病気にかかった事がなかったのか。歯が痛くなり歯医者にいった事がなかったのか。風邪を引いて風邪薬に頼った事なかったのか。能力があるのなら、病院もちょっとした投薬もいらなかったはずである。それこそ、ケッタイな呪文で治せばしまいなのだから。

 実の子供がインシュリンを打つ姿の痛々しさに胸を詰まらせていた親御さんの、辛かった気持ちはよくわかる。

「ワラにもすがる思いで......」と述べた親御さんの言葉は本心だろう。

 だけど、親御さんも、もう少ししっかりしなければならなかったんじゃないか。近藤の祈祷師としての実績をちゃんとリサーチはかけたのか。

okita_news_1203_02.jpg

写真はイメージです

 祈り続ければ、近藤はメシを食わずとも生きていけるような生命体だったのか。

 競馬をやれば、百発百中で勝ち馬を当てる事が出来たか。

 ハラを空かせればメシを食べていたであろうし、ギャンブルをしていたかどうか知らんが、馬券を買わせれば、スリもしたはずだ。ちょっと観察すれば、たんに変わったおっさんであると気づけたはずである。子供の生命がかかっているのだ。何も考えず、近藤の言葉だけを信じたのであれば、余りにも浅はかではないか。

 私も人の親だ。自分におきかえれば、ご両親の気持ちは痛いほどよくわかる。奇跡にすがりたい気持ちも理解できる。

 でも、現在、近藤は何を念じていると思う?奇跡的に事件に問われず、釈放される事を祈っていると、私は思うぞ。

 近藤に何を言ってもムダである。コイツは、自分の事に対しては、実に人間らしく生きている。

 軽はずみな発言かもしれないが、現代の医学の発達は目まぐるしいものがあると聞く。こうなる前に、ご両親にだけは、駿くんのためにも正気を取り戻して欲しかった。

 近藤に対しての怒りより、私は哀しみのほうが強い。

 駿くんのご冥福を心よりお祈りいたします。


沖田臥竜
兵庫県尼崎市出身。日本最大の暴力団組織二次団体の元最高幹部。前科8犯。21歳から29歳までの8年間服役。その出所後わずか半年で逮捕され、30歳から34歳までまた4年間服役と、通算12年間を獄中で過ごす(うち9年間は独居)。現在、本サイトで小説『死に体』を好評連載中。