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連載小説『死に体』新章第三章スタート!

第36話 奴の右目にボールペンを突き立てなかったことを心底後悔した

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恐怖が支配した闇の中では、外界の陽など当たりはしない。

 死ぬためだけに、司法の手に葬り去られるためだけに、寝て起きてを繰り返す毎日。

 未来がないのに、希望なんてあろうはずがない。

 だけど、まだ生きていた。

 こうして殺されるためだけに泳がされているだけだが、死んではいなかった。たしかに、オレはまだ生きていた。

 腹が立っては、ボールペンを突き刺してやる!と顔を真っ赤にし、口が滑ったかと思えば反省し、楽しければ笑いだってした。普通の人間となんら変わらない感情を毎日感じながら、一瞬一瞬を生きていた。

 いや、生かされていた。


(続く)

※写真はイメージです