>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その34 ~山が動いた~
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山口組実録シリーズ 「菱の血判」その34 ~山が動いた~

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正念場を迎えた六代目山口組


 別の直系団体幹部のCは、分裂勃発直後、神戸山口組が六代目山口組の総攻撃により消滅すると予測していた一人だ。そして、Cは六代目山口組に残留した。

 とはいえ、Cは、六代目山口組を第一に考えていたわけではなく、前出のAやB同様、名古屋支配管理体制の六代目山口組にずっと不満を持っていた。だが、遠くない将来に消滅してしまう神戸山口組へ移籍しても「上がり目はない」とも考えていた。つまり六代目山口組を消極的に支持していたと言えるのかもしれない。

 本音では移籍したい思いもあったが、己の実力を充分に理解した上で、消滅が予想される組織への移籍はどうしても踏ん切りがつかなかった──というのが正直なところだろうか。

 しかし、状況は、彼の予想とは異なり、神戸山口組の組員数は上り調子で増加を続け、組織体制も固まりつつあり、六代目山口組でも容易には手出しできないほどの磐石な組織として存在力を強める一方であった。Cの予想は、いい意味で「裏切られた」。神戸山口組は今も平然と存続している。しかも、日を増す毎に、六代目山口組よりもヤクザ組織という言葉が似合うヤクザらしい組織として進化を続けている。これなら、神戸山口組への移籍を決めてもいいのではないだろうか、とCは判断した。先頭に立つ勇ましい者もいれば、Cのように、事態を見極めてから行動を起こす慎重な者もいるのである。

「名古屋の連中は前からエゲツないとはいえ、山口組やからのう(だから自分も残留していた、ということ)。せやけど、これからは神戸のほうがいいかもしれんわい。今でも神戸があるゆうんがすべてとちゃうか」

 六代目山口組には、さまざまな理由から中間的な立場の組員が大勢いた。神戸山口組を支持するわけではないが、さりとて六代目山口組のことも全面的に信じているわけではない、という層である。数だけでいえば、抗争に積極的な層よりもはるかに多いだろう。そんな彼らが、旗幟を鮮明にしだしたのがこの第3次分裂期の特徴といえる。ある者は中立の立場を選び、ある者は神戸山口組への移籍を決定した。その理由も、分裂後の現在の状況の収拾状態に不満を感じたから、という者もいれば、神戸山口組に魅力を感じたから、という者もいる。中間層だった彼らが動き出した、これからがまさに六代目山口組の正念場だろう。


(取材/文 藤原良)