>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その27 ~犠牲者は誰だ~
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山口組実録シリーズ 「菱の血判」その27 ~犠牲者は誰だ~

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六代目体制のシンボルとして担ぎあげられて


 名古屋支配管理体制とは──

■敵視した直系団体から金品を集金する物質的弾圧。それによる様々な金銭的行動制限
■敵視した組員の強制退会と排除 それによる心理的脅迫
■名古屋側に必要と判断された人員の徹底した取り込み。それによる洗脳

 を三大特徴としている。これは、過去、大国の権力者が植民地を単一支配した時のやり方にとても似ている。

 六代目山口組若頭が、名古屋支配管理体制を築くにあたり、当初、一番念頭に置いたことは、体制を実現させるための戦略図の作成と、図の精密さの向上である。その戦略図上で──

■この組からは金銭を巻き上げる。
■この組員はいずれ排除する。
■この組員はこちらの陣営に取り込む。

 というふうに組内の全人員を明確に色分けしたのである。

 そして、その明確な色分けによって、ある者は多大な出費をさせられ、また、ある者は除籍・破門・絶縁処分とされ、そして、ある者は徹底的に名古屋一派に取り込まれたのである。

 極心連合会会長は、名古屋支配管理体制によって、徹底して名古屋一派に取り込まれた人員だったと言える。極心連合会会長は、周知の通り、もともとは山健組出身者であり、神戸一派に縁のある人物である。名古屋一派にとって、神戸一派を総排除するよりも、名古屋一派にとって必要と判断出来る人物は名古屋陣営に抱き込んだほうが得策である事は言うまでもない。使えるものは使っておくという理念である。極心連合会会長は、名古屋一派が統括委員長という高い地位を用意してでも欲しい人材だったのである。

 そして、名古屋支配管理体制の体現者である六代目山口組若頭は、極心連合会会長の心理的洗脳を徹底した。その結果、むやみに金品集金されるわけでもなく、いきなり除籍にされるわけでもなく、六代目山口組内で統括委員長という最高幹部としての極心連合会会長が誕生したのである。

 完全に名古屋一派に取り込まれた極心連合会会長は、神戸一派から言わせれば「許すまじき裏切り者」でしかないが、ここではっきり言いたいのは極心連合会会長も、まぎれもなく名古屋支配管理体制の「被害者」なのである。名古屋支配管理体制に翻弄され、洗脳され「いいように名古屋一派に使われた被害者」なのである。考えが浅かったと言えばそれまでである。が、極心連合会会長は、それだけ一本気でまっすぐな男でもあった。それゆえに、その長所を名古屋一派に利用されたのである。騙されるより、騙すほうが10倍悪いという考え方がある。繰り返すが、極心連合会会長も名古屋支配管理体制の被害者でしかなかったのである。先日、極心連合会会長はそのことにようやく気がついたのだろう。そして、極心連合会会長の進退騒動となったわけだが、時すでに遅く、彼を取り巻く状況はそんな単純なものではなかったのである。結果として、彼は、自身が率いる極心連合会ごと六代目山口組内に残留することになったが、極道としては実質的には「残留引退」である。

 六代目山口組が分裂後、マスコミ報道にもあったように、2名もの六代目山口組直系組長が死亡した。彼らの他にも亡くなっている直系団体の幹部もいる。亡くなったすべての方々のご冥福をお祈り申し上げる。そして、名古屋支配管理体制のまぎれもない被害者のひとりである極心連合会会長の心労を察するといたたまれない思いになる現役組員や関係者も多いだろう。 

 11年前、山口組内が、神戸一派と名古屋一派に見事に内部分裂した時、次期組長候補に当時の三代目山健組組長の名前があがった時、一番喜んだのは、他でもない、極心連合会会長だった。彼はそういう男だった。そして、歳月が経ち、取り込まれた名古屋一派の重鎮のひとりとして実質上の残留引退となった。そんな彼も名古屋支配管理体制という六代目山口組のまぎれもない被害者のひとりであったのである。


(取材/文 藤原良)