>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑱ ~「使用者責任」をめぐる攻防~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑱ ~「使用者責任」をめぐる攻防~

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「使用者責任」をのがれる秘策があった!


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警察庁と警視庁

 六代目山口組から見れば、絶縁者や破門者の集まりである神戸山口組は、渡世の習わしからすればヤクザ者ではない、ということになる。一方、神戸山口組にすれば、六代目山口組から絶縁・破門処分されるよりも先に、「我々は離脱届を出しているではないか」ということになる。

 現在、「これは離脱であるという解釈」と「絶縁・破門処分にしたという解釈」の違いが発生しているわけだ。この解釈の違いが、両組織に属する各組員ひとり一人の立ち居地と思考回路を鈍らせている。

 やっていいのか? やったらバカを見るだけなのか?

 両組織間では抗争厳禁となってはいる。が、現在、六代目山口組では次のような計画があると囁かれている。連載の16回のときにも書いた"秘策"である。

 まず抗争での使用者責任追及を逃れるために、六代目組長が組長職から退く。そして、現在服役中の若頭が七代目を獄中襲名する。それは、若頭こそが後継者であるという序列や習慣による七代目襲名というよりも、六代目の使用者責任逃れの意味合いの方が大きい。獄中にいる若頭が七代目になってしまえば、獄中から配下組員たちに綿密に指示を出す事はできるはずがない。かりに実際の指揮は六代目だった先代組長がシャバから下すとしても、最高責任者である当代は獄中にいる若頭になってもらって当局の目をくらまかすという計画である。

 組長への使用者責任追及はすべて獄中の七代目に集中させるとして、六代目は足を洗ったかたちで裏から指示を出すのか、それとも組長職から退いたとは言え顧問等のポストに就く事で組織内の人間とし指示を出すのかは今のところ不明だが、こういう組み立てで、抗争になっても現六代目への使用者責任追及を阻止する計画の存在が囁かれている。

 六代目は表向きは組織から離れ、獄中の若頭が七代目となる。さらに、名古屋色を薄めないために、三代目弘道会会長が七代目山口組内で重要ポストに就く。現六代目は陰の存在となって七代目と三代目弘道会会長を手駒にして山口組全体を掌握する──まるで裏の院政の様でもある。この状態になってから、神戸山口組に対して拳銃抗争を開始しても、現六代目が抗争指揮を理由に逮捕収監される可能性は低いだろう。当代である七代目はもう既に獄中にいるため、使用者責任追及をされても再逮捕追加刑罰賠償金の支払いとなるだけで身柄を拘束された状態のままである事に変わりはない。実行犯が逮捕収監される事になるが、それはそれでしかない。ともかく、この様な計画があると現在の六代目山口組内で密かに囁かれている。

 改めて考えてみると、誰でも考えつきそうな手口でもあるが、今後、六代目の引退が正式確定したとしたら、それが本当に文字通りの引退だと受け止めていいのかどうか今から迷う。現在の山口組には組長が引退した際には、引退金なるものも存在しているが、六代目が引退する際は、獄中にいる若頭がその金を払うのか? 三代目弘道会会長が払うのか? または臨時徴収で執行部が払うのか? または、全組員がその金を負担させられるのか? もしくは、偽装引退として引退金の支払いをする必要はないとされるのか? 

 なんにせよ、使用者責任というものが認められてしまっている以上、暴力団が正面きってケンカのできない時代なってしまった。しかし、ヤクザはヤクザ以上でもヤクザ以下でもない。だから、今後もヤクザはヤクザの行動原理に基づいて行動するはずだ。もっとも山口組六代目の進退問題については、前記したような偽装引退ではなく、正式に引退しろと叫ぶ者も多くいる。六代目がいまだに引退しないのは、本抗争開始のタイミングがまだその時ではないからか、それとも他に理由があるのか。

(取材/文=藤原良)