分裂の行方は......
──今後は、どうなるとお考えですか?
宮崎 当分は情報戦と多数派工作が続き、収束は難しいと思います。

また、他団体の動きも気になるところです。10月17日、道仁会・工藤會・太州会・熊本會で形成される「九州四社会」は、山口組と神戸山口組に対して、「交友・親睦等の一切を差し控える」とする「四社会統一決定事項」を発表しました。これは、末端組織の組員間の交友も認めないとする厳しいものです。
この他の組織でも「どちらにつくか」をめぐって意見の対立が起こり始めていますね。当代の進退に発展するようなケースもあるかもしれません。
これらに対して六代目山口組がどう動くのか、それによって波乱が起こるのか、注目しています。
──報道によると、道仁会から離脱した九州誠道会(現・浪川会)は約350人でしたが、神戸山口組は約3000人とされています。
宮崎 過去に経験のない大人数ですから、今後は多数派でいることが重要なのだと思います。現在も、絶縁や破門の処分を受けた組員の復帰や、「○○組は□□につく」といった話が、毎日のように噂され、メディアのフライング報道も目立っています。
このような状況下では疑心暗鬼に陥ってしまい、無駄な混乱や対立を生んでしまうこともあります。
──メディアは波乱や抗争を歓迎している印象があります。
宮崎 その方が売れるからですよ。ただ、今回の件は、「実話誌御三家」とされる週刊アサヒ芸能、週刊実話、週刊大衆はきちんと取材して書いている印象です。他のほとんどのメディアは「ヤクザは悪い」というところで思考停止しています。
私は、「ヤクザは悪くない」と言うつもりはありません。
ただ、「ヤクザは悪いから何を書いても、何をしてもいいんだ」という考えには賛同できないのです。
──ありがとうございました。
宮崎学
1945年京都生まれ。96年に『突破者―戦後史の陰を駆け抜けた50年』(南風社刊、現在は新潮文庫所収)でデビュー、その後は警察などの権力に対する批判やアウトローに関して多くの著書を上梓。近著に『ヤクザとテロリスト 工藤會試論 難民化する「暴力団」、暴力装置化する国家』(イーストプレス)、『現代ヤクザの意気地と修羅場 現役任侠100人の本音』(双葉社)、共著に『平和なき時代の世界地図 戦争と革命と暴力』(祥伝社、佐藤優氏)など多数。
※サムネイル画像は六代目山口組総本部 @google 2015