自称ほどアテにならんもんはない
不肖、私めも若かりし頃、女性で金を作っていたこともなくはない。
ただ弁解くさくなってしまうが、悪徳キャッチたちのように、言葉巧みにあれよあれよと風俗の世界へ誘っていたわけではない。そんな話術は私にはない。依頼は女性のほうからであったし、こちら側以上に、女性サイドには儲けていただいていた(言い訳にもならんか......)。
あまりこの辺のタブー?を触るのは、大ひんしゅくを買うおそれがありそうなので本意じゃないのだが、致し方あるまい。今日はくだんの先生のためにも、女性の裸で金にならなかった私の体験談をかいつまんで話していこう。
あれは10数年前。8年の刑務所暮らしを終えて、シャバで半年間、社会見学をしていた頃の話だ(半年後に、今度は4年ほどムショに送られることになるのだが、その話はまたいずれ......)。私の携帯電話に、女の子をスッポンポンにさせ飯を食っていた当時の部下から着信が入った。
「兄貴......、ちょっと相談があるんですけど」
女の子を自由自在にスッポンポンさせていた悪いヤツだけあって、コイツは金だけは困っていなかった。名をオカマとでもしておくか。羽振りの良いオカマにしては、いつになく弱気な声色である。
さては、どこぞの偉いさんをスケコマシてしまい、せっぱでも詰まらせてしまったか。(死んでしまえ!)と思いながら尋ねた。
「どないしてん?」
「ちょっと、女のことで困った事なりましてね」
ほれきた! どこの親分の女に手を出したのだ? ホレホレホレ名を申せ申せ。私はワクワクしながら、先へと話をうながした。我ながら悪いヤツである。
「女を風俗沈めなあかんのですけど、兄貴の口利きでどっかありませんかね。もちろん、礼はさせてもらいます」
全然違った。
なぜ困る? オカマはそれでメシを食っとるではないか。
「そんなもんお前の専売特許やんけ。自分とこで物事したらええんとちゃうんか」
「それがちょっと事情がありまし」「ブスやろ」
間髪入れず私は言った。上玉であれば、私に女のことを頼んでくるようなヤツでは間違ってもない。
「へっ!? ブ、ブスゆうほどブスやないと自分は思うんですけど、ゴニョゴニョゴニョ......」
「何歳や?」
「自分でいうには、29てゆうてます」
私は無言で電話を切った。本当に29歳ならば、「自分でいうには」なんて言い方はしない。

数日後、オカマがとある女性と風俗街を彷徨っているのを見た。私には、その女性は、オカマのお母さんくらいの年齢にしか見えなかった。
(何が29歳だ!)心の中で毒づきながらも2人に発見されないように、そっと電信柱の物陰に身を潜めた私だった。
沖田臥竜
兵庫県尼崎市出身。日本最大の暴力団組織二次団体の元最高幹部。前科8犯。21歳から29歳までの8年間服役。その出所後わずか半年で逮捕され、30歳から34歳までまた4年間服役と、通算12年間を獄中で過ごす(うち9年間は独居)。現在、本サイトで小説『死に体』を好評連載中。
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