>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑮ ~ビジネスか錬金術か~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑮ ~ビジネスか錬金術か~

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「未来を託す」ということ

             


「大丈夫なのか?」
 
 いつしか、幹部たちは、不安とは違う悲しい気持ちになった。この融資話を先導していたのは、かねてから信用金庫と大手中古車オークション会社と関係の深い三代目弘道会である。三代目弘道会会長は、六代目山口組内でも若手ナンバーワンと言われ、「いずれは山口組の組長に」という声も各所からあがるほどの人物である。これまでは、ヤクザてあるが故に、武闘派な一面ばかりが紹介され、語られてきた。そのせいか、三代目弘道会の経済手腕は謎の領域であり、山口組内でも「ケンカ以外で何ができるのか?」と興味を持たれていた存在であった。その興味の根源には「噂通り、山口組組長になりうる資質があるかどうか」という意味合いも強くあった。

 組長は、子分たちを将棋の駒のように使うのではなく、子分たちの命を預かるという大役を担っている。ケンカの強さだけで親分になった人はいない。金だけで親分になった人もいない。山口組の幹部たちにとっては、トータル的に人物評価をしたい気持ちがある。もちろん経済力、経済手腕も大事だが、総合的な評価の中では一部分のファクターでしかない。

 あらためて冷静になってみると、この融資計画はまるでM資金詐欺のようなペテンレベルであった。仮にも将来の山口組組長候補とまで目された人物が、詐欺師やブローカーレベルの経済手腕では、「資質としてどうなのか?」という大きな疑問を持たれてもしょうがない。「修行中の身」という言葉もあるが、六代目山口組の中心組織が、いまだ「修行中の身」ではいささか心もとない。「そろそろ次のレベルに進んでいってほしい」という声があがってもやむを得ない。

 六代目山口組は分裂した。当代といざこざがあったにせよ、過去の因縁があったにせよ、組織人として次なるリーダーに将来性を感じることができれば、名古屋一派からの弾圧攻撃をこれまで11年間も我慢してきた神戸一派といえども、菱の代紋のもと、もうひとふんばりするぐらいの気合いはあったはずである。しかし、いずれは組長になるかも知れないと言われている人物の資質に不安を感じたことも、離脱分裂行動へのひとつの引き金にもなった。

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「山口組の100年 完全データBOOK」刊行/メディアックス

 現在の六代目山口組内でも、組長の資質に対する見方がこれまで以上にシビアになっている。ピラミッド型の組織である山口組は、組織内組織(二次団体)を多く持っている。その二次団体の組長であるところの、いわゆる"直系組長"たちが、組長と言うだけあって自身の組を率いて山口組に在籍している。つまり、本家の若中(わかなか 子分のこと)とはいえ、自分の城に戻ればその人も組長(親分)なのである。

 山口組の組長とは、組長の中の組長、親分の中の親分でなければならない。100年の歴史を持ち、その間、のべ十何万人もの在籍者がいた山口組でも、組長の座に座った人間はたった6人しかいないという事実が、そのことを証明している。そのハードルは、あまりにも高い。

(取材/文=藤原良)