>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑭ ~暗黙の了解、そして~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑭ ~暗黙の了解、そして~

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カタギはカタギ、ヤクザはヤクザ


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写真はイメージです

 現在、六代目山口組に残留している直系組長の中には、神戸山口組への移籍、または、引退を考えている人もいる。引退については、「六代目が許可しないから」という理由で保留している組長が多いようだ(編集部注 山口組には引退の状をまいて、きれいに引退するためにはいくつかの条件があると言われている。六代目の許可もそのひとつで、ほかには「年齢は60代から」といったものもあるらしい。ちなみに、それらの条件をクリアできなかった場合は引退ではなく除籍という扱いになるという)。

 一方、移籍については、様々な理由があるようだ(編集部注 今回の分裂騒動初期、組長は移籍する意思を示したものの若頭が反発、組長と若頭の両者が助っ人を呼んで本部事務所でにらみ合いになった組織があったという情報がある)。なかには、移籍後に自分がどう扱われるかを想像して、踏みとどまっている者もいるらしい。移籍したら、現在と同じ立ち位置に就く事が難しいことが推測され、下げたくもない頭を下げなければならなくなってしまうのでは、と考えているのだろう。

 昔から「ヤクザが懐が深くなったらおしまいだ」という渡世の言葉がある。懐の深さ、とは、たとえば財産を持つとか、愛妻を持つとかいった、一般社会ではむしろめでたいとされているものの事である。だが、ヤクザがヤクザでいるためには常に「失うものがない強さ」がなければならない。懐が深さ=守るもの、失ってはならないものを持つという事は、ヤクザとしては「不利」なのである。

「立場を気にする」のも同じ事ではないだろうか。そもそもヤクザに立場なんてものはない。誰かの立場を重んじる事はあっても、自分の立場を語る事はない。簡単に言えば、日陰暮らしのヤクザが偉くなってはいけないのだ。偉くなったがゆえに、晩節を汚した大物ヤクザがいかに多いことか。

 移籍に二の足を踏む組長は多い。座布団の枚数という、ただ、それだけの事で移籍を踏みとどまっている組長もいる。それがいけない事だとは言わないが、果たしてそれがヤクザなのだろうか? 移籍はする。しかし、下げたくない頭は下げない、それでいいのではないだろうか? 

 人は人らしく。堅気は堅気らしく。そして、ヤクザはヤクザらしく。それでいいではないか。


(取材/文=藤原良)