>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑭ ~暗黙の了解、そして~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その⑭ ~暗黙の了解、そして~

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 創立100周年目の山口組に起きた「別れ」という離脱分裂劇。マスコミ等では分裂理由を、主に会費の高騰、と紹介しているが、血で血を洗いながら100年間も続いた組織の分裂理由はそんな単純なものではない。
「11年前に戻っただけや」
 分裂理由の真相を知る幹部たちは残念顔でこう言った。山口組は11年前から神戸一派と名古屋一派との間で確執が生じていた。脈々と沸々と続いていたものがこの度遂に分裂というかたちで表面化したのである。六代目山口組の分裂劇とは一体何なのか? 山口組に詳しい藤原良氏に解説してもらった。


「自分は狙われない」は「誰かが狙われる」こと?


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写真はイメージです

 離脱分裂後間もなく、いや、離脱分裂前から、山口組六代目の行動は神戸一派に完全に監視、把握されていた。六代目のみならなず、現在の六代目山口組の主要幹部の行動は、離脱分裂前から神戸一派に正確に把握されている。離脱分裂後もそれは同じである。事が起きれば、恐らく、1週間ですべてが片付くだろう。
 
 六代目山口組は、神戸山口組から「やったらやる」と「警告されている状態」である。それは拳銃抗争を積極的におこなうためのサインではなく、むやみな拳銃抗争を回避するための「約束」である。
 
 一概にヤクザ・暴力団と言っても、組員ひとりひとりに様々な事情があり、また、地域による性格や習慣の違いもある。かりにも"日本最大"と呼ばれ、ほぼ日本全国に傘下団体のある山口組の場合、その差は決して小さいものではない。つまり、ひとつの言葉でも、その意味するところや、解釈の仕方が異なってしまう事がよくあるのだ。

 そこに、現場の状況という秒単位の変数や外的要因が加わると、組織の考え方とは違う行動をとるしかない場面に遭遇する者もいる。組織上層部は抗争を避けたいと考えていても、現場レベルでは衝突してしまうケースはいくらでもあるだろう。離脱分裂後、日本各地で発砲事件や傷害事件、にらみ合いなどが頻発しているが、それらは離脱分裂が直接的な理由ではなく、暴力団員が暴力団員の行動原理にしたがって動いた結果のヤクザ事である、と捉えたほうが正しい。
 
 とはいえ、突発的には何が起きてもおかしくないわけで、そういった事情を汲んで山口組六代目の身辺警護が以前より強化されている事は言うまでもない。しかし、その一方で、「自分は狙われない」と確信している関係者が六代目山口組サイドにも神戸山口組サイドにも多いことは事実である。

 六代目山口組と神戸山口組はもともと同門同士であり、互いの動向や考え方に精通している人も多い、という理由はもちろんある。そして、なぜ現在の状況が生まれたのかもよく理解している。裏を返せば、誰が渡世から消えれば事態が劇的に変わるのか、皆が把握しているのである。だから自分が、そのピンポイントのターゲットでない以上、「自分は狙われない」。

 したがって今後も、「総動員による総攻撃の大合戦」という状況にはならないと考えられる。ただし、ごく一部のキーマンは狙われ続けるだろう。「狙われるより、狙う者のほうが強い」という言葉がある。たとえ、狙う側が人数で劣っていたとしても、狙うという事は、そもそもそれなりに勝算があるから狙うのである。そして、一度ロックオンしたら、そう簡単には逃がさない。