>  > 「暴力団の者だ」と名乗って世田谷で恐喝を続けている男が本当は何者か推理してみる
元極道の異色作家・沖田臥竜のニュース解説  「プロ」はニュースはこう読む!

「暴力団の者だ」と名乗って世田谷で恐喝を続けている男が本当は何者か推理してみる

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ムショでフカシがバレると大変!


 ほぼ騙りと思われる世田谷男。だが、こんな男は、実のところシャバよりも塀の中のほうがゴロゴロ転がっている。なかには大手を振って闊歩(かっぽ)している奴だっている。

 見事な彫り物を全身に背負い、まったくの気後れもせず、新入で工場に落ちてくると、海千山千の受刑囚たちですらコロッと騙されてしまうのが刑務所という場所なのだ。

 その刑務所管区からほど遠い地方の組織名を口にされ、

「そうなのです。私、青森の〇〇一家の貸元なのであります」なんて言われてしまうと、関西人にはまったくもってわからない。

 すわ!? 大物到来か!?ともなりかねない。

 だが、である。それが出所の日までまかり通るかといえば、そうは問屋がおろさない

okita_news_1017_03.jpg

大阪刑務所正門(法務省のホームページより)

 刑務所というのはテレビの番組争い、味噌汁の具の量......、どんなささいなことでも簡単に血の雨が降るところなのだ!

 要するに皆が暇を持て余しているので、そうやって登場してきた新入の懲役をずっと観察しているのだ。領置金の使い方、限られた私物の物品関係、面会、手紙の動き。

 少しでも疑惑の芽がめばえはじめると、
「おいっ、あいつ手紙もあんま来てへんし、怪しんとちゃうんかい。一丁シャバにハト(連絡)いれて、確認とろか!」となってしまう。

 以前なら、その連絡手段に多少の時間を要する事が少なくなかったが、現在は監獄法の改正により、幾分シャバへのハトが飛びやすくなった(編集部注 法律が変わって、親族以外の友人も面会できるようになりました)。おかげで、当人が騙りの人間だった場合は、すぐにこんな電報が刑務所に届いてしまう。

《〇〇県の〇〇会社を訪ねましたが、そのような社員の方は働いておりませんでした》

《その男の名前は○○県にある○○組には登録されていない》つまり男は現役ヤクザではない、と隠語を交え言っているのだ。

 そうなると、受刑者は暇だけに大変だ。

 工場内の空気は、その新入に対して一瞬にして変わってしまい、それまで「親分さ~ん」などとシッポを振っていた外国人受刑者でさえ、「ふんっ!」という態度に変貌してしまう。

 さらには運動時間に本物のヤクザたちに囲まれ、
「こらっ汚れ、オノレ、シャバに在籍(確認)入れさしたら、いてへんゆうとるやないかいっ! お前、この工場舐めとったらあかんどっ!」などと、四方八方から詰められてしまうのだ。

「ちちちっ違いますぅ。外で実は渡世名をつかっておりまして......」と弁解してみせても、一度貼り付けられたレッテルはピタリと剥がれない。

「やかましいわいっチンカスっ! 何が貸元じゃっ! 飛ばれて(どつかれて)出ていくか、自爆(自ら作業拒否などで工場を出て行く)するか、どっちかケジメつけたらんかいっ! そうせな、シャバまでいくどっ!」とやられ、

「しゅ、しゅいましぇんっ。自爆しますぅ~」となってしまうのである。

 刑務所を務める心得として、協調性を持ちながら、必要以上に目立たず、かと言って萎縮する事なく、他人の話題や噂話には極力近づかない、というのが、最上な務め方ではなかろうか。

 ウソをつくのであれば、捲(まく)れた時の言い訳もちゃんと用意しておかないと、場合によっては過酷な受刑生活がもっとミジメで辛いものになってしまう。

 裏ワザとして、工場内の権力者の傘の下に、ヤクザをやる気もないのに、入ってしまう方法もなくはないが、あまりお勧めはできぬ。なぜなら、その人間関係を出所後も強要され、シャバでもその関係を引きずってしまうケースもあるからだ。

 さて、この世田谷男、忍びよる司法の手にからめとられた時、どう出るのであろうか。

 頼むから、「ヤクザと言えばビビると思って、騙ってしまいましたっ。しゅいましぇん~」などと、ガッカリするような事を言うてくれるなよ!


(文=沖田臥龍)