>  > デカ盛りの聖地、入間「古都」にグルメ巡礼旅!

デカ盛りの聖地、入間「古都」にグルメ巡礼旅!

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

天国のやなせたかしも微笑む心意気の名店

 『アンパンマン』の作者、故やなせたかし氏は生前こう言っている。
「何でアンパンマンが食べられるようにしているか。それは私の戦争体験と関係があります。人間、極限状態になると、暑いのや寒いのはどうにかなるものですが、食欲だけは我慢が出来ないんです。そういった体験を踏まえてアンパンマンのコンセプトがあるのです」

 筆者に戦争体験はないが、貧困という名の極限状態は何度も経験している。衣食住という言葉があるが、いくら貧困でも寒さを凌ぐ衣服と横になるだけの住居は確保している。しかし空腹だけはどうにもならない。この「腹が減ってやばいなあ」「このまま食料が絶えたら、俺はどうなるのだろう」という不安状態に襲われる度に、先のやなせたかし氏の言葉が脳裏をよぎる。

 この「空腹だけはどうにも我慢出来ない」という人間の弱さを知った上で、運営がなされている定食屋が、今回紹介する埼玉県入間市の「古都」である。

1008sudo_01.jpg

 大盛りマニアの間ではちょっと知られた定食屋「古都」。定食屋という語感から、どこか駅前、もしくは繁栄している商店街の中の立地を想像してしまいがちだが、「古都」にそれはあてはまらない。

 西武池袋線の入間市駅から徒歩だと......20分で着くか分からない。周りは特になにもない。強いて言えば大型ホームセンターや大型スーパー銭湯がある程度。イルマニアならぬ「古都」マニアの筆者の友人は、都心の自宅から入間市駅まで電車で行き、そこからタクシーで「古都」まで行くそうだ。かように立地条件はけっして良くないのだが、しかしいつ行ってもほぼ満席という事実からも、「古都」が良店だと想像出来るであろう。

 さて、先程も記したが、「どうにもならない空腹をどうにかする」というやなせたかし的発想なのか、「古都」のメニューは普通盛を頼むと、他店では「大盛り」に相当する量で出てくる。それも「理にかなった分量」の大盛りなのである。よく大盛り店にありがちな「カレー●●kg、完食挑戦者募集!」といった選手権の匂いがする大盛りではなく、「理にかなった分量」の大盛りなので、その量には人の心が通っている。

 女性一人だとちょっと完食は難しいかもしれないが、育ち盛り、働き盛りの男性にとっては丁度いい量かもしれない。先ほど書いた「理にかなった分量」とはそういう意味である。

1008sudo_02.jpg

 覆面取材で訪れた筆者は、テーブル席が満員のため、「奥の院」という表現がピッタリの20畳ほどの部屋に通された。鴨せいろ(並盛り)を注文。料金は700円台。ほどなくして大盛りのそばと汁と副菜が運ばれてきた。そばの大盛り感は「理にかなった分量」で、丁度腹いっぱい満足に完食することが出来た。先程から分量の事ばかり書いているが、味も美味しいし(口に含んだ瞬間「お!」、と思った)、値段も先述のように相場より大分安いのではないだろうか。

 勘定するときにお姉さんにさりげなく聞いてみた。
「何でいつも大盛りにしてくださるんですか?」と。

「来てくれたお客さんがお腹いっぱいになって帰って欲しいという願いからなんです。食べきった後『ちょっと物足りないなあ』という思いをしてほしくないんですよ」とお姉さんはにこやかに答えてくれた。

 人の心が通った大盛り、つまり「理にかなった分量」の秘密は、誠の心から発せられる「お客さんのために」という気持ち、それでしかなかったのだ。

「オープンしてから31年、最初は周りはタバコ屋さんしかありませんでした」
と「古都」のお姉さん。

 こういう良心的なお店が郊外の口コミレベルで残っている日本は、まだまだ捨てたものではないだろう。天国のやなせたかし氏も納得しているのではないだろうか。


「古都」
住所:埼玉県入間市宮前町12−11
営業時間:平日11:30~14:30(LO),18:30~21:00(LO)/土日11:00~14:30(LO),18:30~21:00(LO)
定休日:月曜夜、火曜夜、木曜夜(祝日を除く)。祝日によって営業が変わるので、前もって確かめて行くが吉。
URL:http://iruma-koto.jp/

1008sudo_03.jpg

麺類以外にもカレーや丼もの、フライ系その他、ご飯や味噌汁のつく定食全般がメニューにあり、幅広くカバーしている。


(取材・文=須藤鑑)