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ジャマイカのスラム街の名を冠した、ルーディー集うレゲエバー

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埼玉県の西部にある入間(いるま)。ここは元々お茶畑しかなかったような土地だが、近年巨大なアウトレットモールなどが建設され、今ではまるでそれが入間市を象徴するモダーンなイメージとして定着しつつあるのだが、実はこの街にもアウトレットなんかより1000倍濃くて深くておもしろい「ディープ入間」とでも言うべき濃密な空間が存在するのだ。その入間という土地の濃密さを紹介するシリーズ第2回は、扇町屋。


ワルいオーラの匂う店

 西武池袋線の入間市駅から南に向かって徒歩で約10分ほど下ると、扇町屋(おうぎまちや)と呼ばれる観光スポットにたどり着く。その一帯は先の太平洋戦争において幸運にも空襲の被害に遭わず、戦前の趣を残している街並みだ。

 そのメインストリートから道一本入ったところに、和やかな街並みの空間をぐにゃっと歪ませる、濃いジャマイカンテイスト出まくりのレゲエバーがある。

「トレンチタウン」

 お店の外観から既にマジモンの悪いオーラが出まくっており、ジャマイカ映画の『ROCKERS』から飛び出してきたかのよう。

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店の名前「トレンチタウン」とは、ボブ・マーリーなど錚々たるレゲエミュージシャンが創作の場としたジャマイカ・キングストンに実在する街に由来する。

 だが店内に一歩入ると、いつも明るくて優しい冗談好きのマスターを中心に笑いが絶えない空間が広がっている。客層は老若男女様々で、もちろん国籍、人種も関係ない。外国人のお客さんも多く、皆で一緒になって楽しい酒を飲んでいる。みんなルーディー。だからこそ笑いが絶えないのかもしれない。

「毎年レゲエの野外イベントに行くんだけど、平和でいいね~。レゲエに僕はあんまり意味とか求めなくて、平和なのが好きなの。だから野外フェス行くときはいつもバカ殿の格好して行くんだけど、よく考えたらレゲエと全然関係ないっていうね(笑)。しかも雨に弱いコスプレ、バカ殿は」(マスター)

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バカ殿顏でレゲエ祭りに行くというマスターは来てのお楽しみの男前である。

 確かに店内の至るところに様々な写真が貼られているなかに時折バカ殿の写真が混じっているが、これがマスターだったとは...(笑)。レゲエの野外フェスでバカ殿...ジャマイカ映画に出てきそうなマジモンのルーディーが集まるお店でありながら、そこのマスターがレゲエでバカ殿コスプレをする振り幅の広さがこのお店の魅力であり、そこに惹かれてさらに人が集まっているのだ。

 そもそもマスターは生粋の入間っ子。常連さん達の中にもマスターの幼馴染みが何人もいて、いつも呼吸はピッタリ。そのような空間は自分のような新参者にとっても心地いいものだ。ここ入間に残る土着的な横のつながりの強さを、このお店でははっきり感じることが出来る。そういうところも今時の日本では珍しいと言えるのではないか。
 入間で40年以上生きてきたマスターが、それ故にこの土地の顔役的なポジションになっていたのは、自然な流れだと言えよう。地元の知り合いや、大勢のお客さんから相談を受ける事がしょっちゅうだという。

 そもそも自分が「トレンチタウン」と縁が出来たきっかけというのも、自分と知人が仕事をするちょっとした作業スペースが見つからなかった折に、知人がマスターに相談したのが最初だった。その時はお店の奥にあるソファーのスペースをお借りすることが出来て、とても感謝したのを覚えている。マスターは嫌な顔一つせず「これからも、いつでも使ってよ!」と言ってくれたのが印象に残っている。

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奥にはソファーもあり、くつろげる居心地の良いスペースが広がっている。

 取材で訪れたこの時はこの時で、別の心配事をマスターに伝えている自分がいた。詳細は省くが、話したことでずっと胸に引っかかっていた物がスーっと消えたのだから、やはり何かがこのお店にはあるのだろう。
 こういった場所が地元に一つでもある事を知っていれば、それだけで住んでいる者にとっては大きな救いにはなる。自分以外にもそう思っている人が多いからこそ、大勢の人が相談するのかもしれない。

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気軽に悩み事を話しに立ち寄れる場所でもあるのだ。

 何だかこの部分だけ強調すると、まるで清廉潔白な場所に感じるが、店内の雰囲気はかなりトッポくて、ワルそうな感じで充満している。これは褒め言葉であり、ワルそうな感じがお店を居心地よくさせているとも言える。
 何だかんだで周りはみんな根っこがルーディー。今さら行儀よく生き方を変えるのも面倒くさいではないか。

「うん、そうだよね。だったら格好つけて行くしかないんだよね。このまま行くよ。うん、とにかく格好だけはつけるよ」

 そう最後に語ったマスターの目は、悪戯っ子のように悪そうに輝いていた。
 蛇足になるが、この日の会話の9割は載せられない内容だったことだけ付け加えておこう。

 ジャマイカンスタイルは誇張でもなんでもなく、マスターはこれからもルーディーで居続けるだろうし、だからこそ醸し出されるワルくて格好いいオーラのあるお店なのかもしれない。


「トレンチタウン」
住所:埼玉県入間市豊岡3-6-12(愛宕神社すぐそば)
営業時間:21:00~5:00
定休日:不定休


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(取材/文=須藤鑑)