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元極道が解説する「これが"みかじめ料"の真実だ」

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そのパンチパーマの客は内偵中のデカ


 逮捕に対しては、容疑者に連絡等はなく、いきなり柄をとりにくるのに対し、中止命令の場合は本人に連絡がくる。そこで時間を合わせ、指定された所轄署に出向くのである。

 私が出向いたのは、某署。ここ最近では、とんとお世話になっていない警察署で暴力の刑事もほとんど知らないはずであった......のだが、ついてびっくり、出迎えた時代遅れのパンチパーマを見て、ひっくり返りそうになった。

「親分~(私のことである)、一人できたんかい~」

 パンチパーマ男は、私が義理の弟に任せている飲食店に、最近顔を見せ始めた客であった。

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写真はイメージです

(ちぇ、刑事やったんかいっ......、内偵入れてくさっとってんな)私は、そのパンチ頭を見ながら舌打ちをした。

「で、なんの中止命令でんねん」平静を装い署内に入りながら、パンチに尋ねた。

「親分~、酒屋に店の1周年やから生樽一本サービスせえて、店長に言わしたやろ。ホンマは恐喝でパクろ思て内偵入れてたんやけど、まあ今回は中止命令で勘弁しといたるわ~」

 パンチの言っている事が本当であれば、私はなんてセコイ親分さんであろうか。こんな事で二次団体の執行部がパクられ、新聞にでも載せられた日には、大笑いものである。

 だが、そもそも酒屋に注文していたのは、義理の弟である。しかも酒屋にしても一つ下の私の後輩だ。私の結婚式にも笑顔で参加していた。その酒屋と契約を結ぶ際に、「イベントの時はサービスさせていただきますから言って下さいね」と言われていたりもしていた。

 というより、生樽を酒屋がサービスしてくれていた事すら知らなかった。

「恐喝かいっ、モノはいいようやのっ」と、言いながら、室内に入り、県警本部の人間からもう一度、罪状の説明を受け、納得すればサインするよう促された。もちろん、全くもって納得しがたかったが、なんの効力もない中止命令を拒む理由もない。それにヘタに拒否し、正式に令状を発行され、裁判にかけられても笑えないので、私は黙ってサインする事にした。

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写真はイメージです

 帰り際も、パンチが見送りに出てき、「親分、南署ばっかり贔屓しとったらいかんで~。ウチでも遊んでくれな~」

 南署とは、私を事あるごとにしょっぴこうとしてい所轄である。

「ええですわ~。もうオレ、家出んようにしますわ~」と言いながら、パンチに背を向け、中止命令をビリビリに破いたのだった。

 義理の弟が後輩に酒を注文して中止命令だ。冗談にしても笑えないが、もっと笑えない事態が私を待っていた。間髪入れず、次は違う所轄が詐欺で私を引っ張ろうと企んでいたのだ。

 その詐欺の理由がまた傑作である。

 飲食店を経営していたとはいえ、ヤクザであった私が店舗を借りる事はできない(以前の飲食店は、私が名義人だったので、これでもパクられかけていた)。
そこで、店を任していた義理の弟を名義人にしていたのだが、店の屋号を私の娘の名前にしていた事が詐欺にあたるというのだ。

 つまり名義人が私じゃないのに、実質的オーナーが私であるところが詐欺だ、という解釈なのである。

 思えば、この時初めて私は、ヤクザで生きて行くことの限界を感じたのかもしれない。




沖田臥竜
兵庫県尼崎市出身。日本最大の暴力団組織二次団体の元最高幹部。前科8犯。21歳から29歳までの8年間服役。その出所後わずか半年で逮捕され、30歳から34歳までまた4年間服役と、通算12年間を獄中で過ごす(うち9年間は独居)。現在、本サイトで小説『死に体』を好評連載中。