>  >  > 第27話 ゲームは子供のもとに、女は男のもとに、
連載小説『死に体』

第27話 ゲームは子供のもとに、女は男のもとに、

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【ここまでのあらすじ】3人の命を殺めた罪で拘置所に収容中の藤城杏樹。杏樹の心の支えは、まめに面会に来てくれる恋人のヒカリやヒカリの子、英須(えいす)だった。一審の裁判で死刑判決を受けた杏樹に、控訴してほしいと必死に訴えかけるヒカリ。その姿に心が揺れる杏樹だったが、自分がしでかしてしまった罪の大きさが杏樹に控訴をためらわせる。そんなある日、杏樹はぼんやりとヒカリとの出会いを思い返していた。


連載小説『死に体』第26回 第ニ章(五)


文/沖田臥龍

「おぅ、ロキちゃんか、お前、なにしとんねん」
──別になんもしてまへんけど、なんかあったんでっか──
「ああ、ちょっとな。ところでお前、今、電車か新幹線のゲームやってるはずやろ?」
──はあっ? それをゆうなら兄貴、機関車でんがな。電車と機関車は全然ちゃいまっせ。そもそもこのゲームはねっ、てゆうか、なんで兄貴っワシが今ゲームやってるって知ってますの? あ、古家に聞い──

 最後まで、ロキの寝言を聞く必要はなった。オレはケイタイを切り、ロキのヤサへと向かうことにした。これがロキにとって悪夢となる30分前のやりとりだった。

shinitai_1002_01.jpg

「だから、兄貴あきませんて! 昨日、わざわざ古家に当番変わってもうて、夜中の2時から並んでまんねんで。それで、やっと手に入れたレアもんなんでっから、兄貴っそれだけは絶対あきませんて!」

 敷きっぱなしにされた布団の上で、ロキはオレにしがみつかんばかりに訴えてきた。ヤクザがわざわざ当番を代わってもらってまですることか。バカではなかろうか。

「ええかっロキ。よう聞けよ。もし、このゲームソフトに心があったとする。理性があったとする。

 わかるか、理性やぞ、り・せ・い

 その場合、いくら遊ばれんのが宿命のゲームソフトだって、同じプレイしてもらえんのやったらちょっとでも大切にしてくれる人の元へ嫁ぎたいと思うんが人情やないか」

「嫁ぎたい? 人情??」

 もともとマヌケな小顔を一層マヌケにして、ロキはオレの言葉をアホみたいに繰り返した。

「そうや。プロの風俗のお姉さん達だって仕事とはいえ、どうせプレイするなら、お前みたいなゲームオタクのブ男より、オレみたいなジャニーズ系のほうがええに決まってるやないか」

「ハッハハハ、兄貴がジャニーズ系て、ハッハハハ......イテテテ」

 バカ笑いするロキの耳を引っ張りあげオレは話を続けた。

「何もお姉さん達だけやない。我々、極道かて一緒やぞ。同じ命を預けるんやったら、預けがいのある親分、兄貴分に預けたいと思うんが当たり前やないか。幸いにしてお前はオレという立派な兄貴分を持てたおかげで、こうして懲役に行くコトもなく、夜中に気......マヌケ面して、デパートなんぞに並んでおれんねん」

 気持ち悪い、という言葉は流石に呑み込んでおいた。

「お前は、そのコトにもっともっと感謝せなあかん。オレの写真でも拡大して神棚にでも飾っとかんかい。ほんならなっ」

「さっぱり意味わからん......ってちょっと兄貴あきませんて! おいっコラ待ておっさん!」

 ロキの嘆願を一切ムシして、オレは目的の『ブツ』を押収し、ぼろワンルームを後にした。