売れ筋は強壮剤(のコピー商品)

「私、タバコ吸わない。これ韓国の量産店から届くやつ」
なんと、タバコもコピー品であった。オーナーの話では、タバコに限らずこの部屋に並べられたコピー品のほとんどが、韓国から届いた代物だという。
「昔はシャブも、コピーの正露丸に隠しとったら、税関引っかからへんかったんやで~」となぜか得意げなA氏。あんたには聞いていない。(誰がそんな物騒な取材をするか!)と心の中でツッコミながら、さらにオーナーに尋ねる。
「景気はよろしいでしょうか?」
バカなこと聞くんじゃないよと笑ってくれ。結局、聞く事といえば、人の懐事情である。
「アッハハハハ、でんでんダメダメ。韓国も円安ででんでんダメ。友達もいっぱいパクられたし、もういつ閉めてもいいヨ」
おいおい、日本全国を代表するコピー屋がそんな弱気でどうするのだ!
「割あわないよ」
どうも仕入れの費用とパクられた時のリスクを考えると、現在のコピー屋はそれほどオイシイ商売ではなくなってしまったらしいのだ。またインターネットの普及も大きかったという。誰でも簡単にコピー商品を買えるようになってしまったのだ。
「でも、これはずっと買いにくる」

そうオーナーが奥から取り出して見せてくれたのは、おじさん達の強い味方として、かつてブームを巻き起こした勢力増進剤の数々。バイアグラにシアリス、レビトラ、タダラフィルまで有名どころが次々に並べられた。その中にひとつだけ、見慣れない商品があった。ピンク色したゼリー状の液体が入ったチューブである。
「これは、なんですか?」と指差し尋ねると、オーナーが口を開こうとした瞬間、わきからA氏が口をはさんできた。
「それはな、姫アグラや。バイアグラの女版で女にアソコに塗るやっちゃ」
はぁ......なるほど......。
「あんま効かんど」
とうとう聞いてもいない効能まで語りだした。この男、どこまでド厚かましいのであろうか。人が売ってる商品に対して、まあズケズケとものを言う奴である(コピー商品だけど)。
そして、そうこうしているうちに、他のバイヤー2人組が部屋に入ってきたため、今回の取材はここまでとなった。
「何か、欲しいいるものあったら、Aさんに言ってヨ」とやわらかい口調でオーナーが言ってくれたので、ええ、まあ、とあいまいに笑みを浮かべながら返したが、おそらくA氏に頼むことはないだろう。
マンションの入り口でA氏と別れ、車へと乗り込んだ時には、暗闇かけていた夕陽は完全に落ち、道頓堀の水面に輝くネオンが我々を現実世界へと引き戻してくれたのだった。
あっ、A氏にお礼を言うのを忘れた......ま、いっか。
(取材・文=R-ZONE取材班)