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俺の、最後の獄中絵日記 第236回

死刑も行われる東拘に伝わる恐怖の怪談話

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらい月形刑務所で服役中だった後藤武二郎は、ある日、たまたま目にした職業訓練募集の張り紙に深く考えず応募したところ、まさかの当選。住み慣れた北海道を離れ、九州は佐賀少年刑務所へ移ることになってしまった。

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どこにでもある怪談話とはいえ...

2013年(平成25年)9月1日

夏といえば怪談。
そんなテレビ番組待ってたんだけどやらない。
だからここで昔の東京拘置所にまつわる怪談話を一つ。

昔の東拘には新舎と呼ばれる4階建ての建物が6舎まであった。
5舎だけが雑居になっていてその4階に俺たち懲役がいた。
そこには「水くれ報知器」っていうのが昔から語り継がれる怪談話がある。

独居の6舎1階に住む未決囚が病気にもかかわらず診てもらえずに、
蛇口から水も出ず、報知器出してオヤジを呼ぶにも現れない。
男は一晩中「水くれ〜」「水くれ〜」と叫びながら死んだという。
その男の怨念なのか今も暑い日の夜になると6舎1階には
「カターン」「カターン」と夜中になんども報知器の降りる音がして
「水くれ〜」という声がこだますると言うのだ。
今と違ってその頃の東拘の建物は古くて不気味だから、説得力ある話なんだよ。

死刑だってここでやってるし、3000人も収容されてりゃあ
病気で命を落とす人だって少なくないと思えばなおさら気味が悪い。
ところがこの後、東京拘置所の図書係に務めた俺は
この恐怖の話に直面することになるのだ。

ある日、台車を押して荷物を取りに行くのが例の6舎だった。
1階の一番手前の独居は倉庫になっていて、そこへ物を取り出しに行った。
例の話を思い出してちょっとひるむ。
1階舎房の通路入口のドアをオヤジが開けると、
倉庫になってる舎房のドアのフチに開いた扉がぶつかる。
すると自然と報知器が「カターン」と落ちる。
オヤジは戻すが荷物を出し入れしている最中にドアがぶつかるたびに「カターン」。
これ、ただ建て付け悪くてこうなんだよ。
夜中の看巡りのオヤジがこの階へ来るたびカターンと落ちるってだけの結末だ。

結局、怪談話の真相なんてこんなものだよ。
死後の世界なんてないのさ。


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