>  > 山口組実録シリーズ 「菱の血判」その③ ~分裂Ⅲ~
日本の裏社会で今、なにが起ころうとしているのか?

山口組実録シリーズ 「菱の血判」その③ ~分裂Ⅲ~

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最終的には「ヤクザ社会再編」まで突き進む可能性も


 ただ問題なのは、他組織の行動である。とくに注目したいのは、関東圏に本部を置く指定暴力団や非指定暴力団の動きである。以前から神戸一派の組長と兄弟分の組長もいれば組織同士で縁を持ち親戚付き合いしている組織もある。今回は分裂というより、もはや「静かなる抗争」の意味合いもあるため、兄弟分たちは当然「助っ人」として加勢する事になるだろうが、この助っ人たちの一人ひとりにも、それぞれに六代目山口組名古屋一派に対する考えがある。それは人や組織によってまちまちだろうが、一応に共通して言える事は、関東圏のヤクザたちにとっても「名古屋が東京オリンピック利権を独占するのが気に入らない」ということである。

 関東圏を根城にするヤクザたちにとっては、東京での利権は自分たちの物という意識が強い。それが名古屋に独占された。それは「力」による独占であり、暴力団の論理としては強い者が獲物を独占するのは当たり前の事ではあるのだが、それでも縄張り意識の強い関東者たちにとっては名古屋一派は間違いなくよそ者でしかない。さらに代紋も違えば、これはもう明らかに他者である。

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解体工事中の新国立競技場予定地 wikipediaより引用(リンク

 東京オリンピックだけではない。六代目山口組発足当時から、関東圏のヤクザたちは何かと名古屋一派に冷や飯を食わされてきた。関東二十日会の解散に繋がった国粋会の山口組参加騒動。そして都内に直系組織の誕生。よそ者に自分たちの縄張りを食い千切られたという憎悪が関東ヤクザには根深くある。つまり、神戸一派と共通の敵を持つのが関東圏のヤクザたちなのである。しかも神戸一派の組長と兄弟分もいる。関東圏で有名な武闘派組長の組織では、神戸一派の助っ人という立場で、すでに「40人ものヒットマンを地下に潜伏」させているとも聞く。拳銃による抗争の可能性は低いとは言え、その時が来たらやるしかない。武力抗争の下準備はもう始まっているのだ。

 こういった他組織の様子を見ると、過去、三代目山口組時代に設置された対山口組包囲網を思い出す。全国制覇に向けた抗争を繰り返す三代目山口組に対して、反山口組組織は連合体となって対山口組包囲網を敷いた。神戸一派に加勢する助っ人たちは、現在はヤクザの掟によって助っ人参加しているに過ぎないが、いずれ連合して新時代の対山口組包囲網まで発展する可能性もある。さらに一説には、これを機に日本ヤクザ社会の再編がなされるのではないか?という声も出ている。

 日本経済の好景気不景気はともかくとして、六代目山口組発足以来、多くの他組織が「名古屋支配体制のあおり」と「六代目盃外交の影響」を受けて低迷した。おかげで日本のヤクザ社会では、六代目山口組名古屋一派のひとり勝ちとなったわけだが、そのせいでヤクザ社会全体のパワーバランスも大きく崩れることになった。ヤクザ社会という「力がものを言う世界」で「力でものを言ってきた名古屋一派」が間違っているわけではない。少なくとも、暴力団の論理では。だが、大きく片一方にふれた振り子は、反対側にも大きくふれるのが道理だ。今、神戸一派を中心に多くのヤクザ団体がまとまって、名古屋に喰い散らかされたヤクザ社会を再編しようという声が飛び交うようになったのも、振り子の反動だと考えればわかりやすい。

 総合的に見て、窮地に立たされているのは六代目山口組名古屋一派ではないだろうか。今、名古屋一派の状況がどうなっているか? 次回はそこに切り込んでいく。


(取材/文=藤原良)