>  > テレビで犯罪の一部始終が流された自称・無職の振り込め詐欺犯の今後を元極道が想像
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テレビで犯罪の一部始終が流された自称・無職の振り込め詐欺犯の今後を元極道が想像

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「テレビに自分の姿が」"振り込め詐欺"で男出頭(リンク

「テレビに自分の姿が」"振り込め詐欺"で男出頭
テレ朝news (2015/09/02 16:12)
 出頭の理由は「テレビに自分の姿が映っていたので」と話しています。

 自称・無職の本田典之容疑者(50)は、千葉県の男性(69)から現金500万円をだまし取った疑いが持たれています。警察によりますと、本田容疑者は「会社の金を使い込んだ」などと男性の息子などを装って嘘の電話を掛け、現金をだまし取ったということです。警察は本田容疑者の映像を公開して捜査していましたが、1日、東京都内の警察署に出頭してきました。本田容疑者は「テレビに自分の姿が映っていたので出てきた」と話す一方で、詐欺容疑については「封筒の中身が現金だとは知らなかった」と否認しています。


AV選んでる姿を全国ネットで流された男


 逮捕された容疑者が、自分の職業を「会社役員」などと言うと、その会社がらみの事件であったりその会社の世間での認知度が高くない限りは、報道されるときはたいてい「自称」がつけられる。

 警察発表に沿った報道であるのだろうが、そこには「会社役員だなんてこの人が勝手に言ってるだけで、事実はわかりませんよっ!」というニュアンス(というかマスコミの悪意?)がふんだんに含まれている気がしてならない。

 まあ"会社役員"や"会社経営者"というのであればジャンジャン悪意をこめて「自称」を乱発させれば良いと思うのだが、最初から「無職」と言ってる容疑者に対し「自称」はいらんだろう。

「自称・元暴力団員」という報道もみた事あるが、ここまで来ると、なんだが聞いていてこっちまで嫌な気がしてしまう。何年カタギでがんばろうとも、「元暴力団員」としか呼ばれないのはあんまりではないのか。それとも暴力団員だった経歴は一生消えないということか。自分で巻いた種と言われれば、それまでかもしれないのだが......。

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被害者から現金をだまし取り笑顔でタクシーに乗り込む本田容疑者 千葉県警のサイトより

 さて話を本件に戻そう。「自称・無職」のこの容疑者。ある程度、腹を決めてでの出頭であるだろうが、さすがに「封筒の中身が現金だとは知らなかった」などというこの容疑者のフザケタ供述は、警察側は一切、聴いてはくれないだろう。

 本人が言い張り続けるのであれば、警察は伝家の宝刀「認定」で、是が非でも起訴に持っていく腹づもりのはずだ。「本人は否定しているが、情況証拠から鑑みて、それが現金だと知っていたはずである」となるはずだ。

 だいいち、「詐欺容疑を否認します」というこの男の供述を採用してしまえば、共犯者である受け子や出し子まで逮捕することができなくなってしまう事を警察や検察は充分に理解している。

 それにテレビを使って大々的に情報提供を呼びかけた容疑者が、20日やそこらで釈放されれば、世論も黙ってはいまい。

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分前を受け取り、ビデオボックスで真剣な表情でAVを選ぶ本田容疑者 千葉県警のサイトより

 警察や検察は、起訴ありき、一発懲役ありきの厳しい姿勢で臨むであろうが、それに対してこの容疑者はどこまで否認を貫けるだろうか。さして親しいわけでもない共犯者の名前を出さずに、すべてを背負って一人で刑務所に行く覚悟はあるのだろうか。危ない橋を渡ったあげく、ビデオボックスでAVを借りるくらいの報酬しか受け取れなかった男が犯罪組織にどこまで忠誠?を貫けるものなのか、そこが見どころである。

 現在ほど振り込め詐欺や特殊詐欺が巷を騒がす以前は、受け子や出し子に対する処罰も比較的甘かった。

 この容疑者のように、知らぬ存ぜぬを押し通せば、証拠不十分ということで20日で釈放なんて事もあったし、初犯であれば仮に起訴されたとしても執行猶予がつくこともままあった。

 それだけに受け子や出し子は口を割らずにやり過ごす事ができたのだが、昨今は一発懲役も視野に入ってきたので、比較的簡単に口を割る。おかげで犯罪グループのトップやトップに近い人間まで逮捕が芋づる式に逮捕までたどり着くケースが増えてきた。

 頭の涼しい者は、裏ビジネスで稼げるだけ荒稼ぎをすると、さっさと表のビジネスへと鞍替えしていったが、これだけ取り締まりの厳しくなった現在でもいまだに振り込め詐欺を続けているようなヤカラは、はっきり言って頭の悪い者ばかりだ。警察対策といっても、せいぜい下っ端と自分のあいだにはさまる人間を増やし、下っ端が捕まっても自分までたどり着かないように工作するのが関の山。当然、関わる人間が増えただけ自分の取り分も減るし、事件も発覚しやすくなる訳で、最近の振り込め詐欺の手口が荒っぽくなってきたのはそういった事も関係しているのかもしれない。

 ちなみに私がいた組織では、振り込め詐欺系に手を染めるだけではなく、関わったとしても一発絶縁という通達が出されていた。

 だから、という訳だけではないが、私の周囲に振り込め詐欺で羽振り良い者はいなかったし、みんな何やかんやで貧乏していた。

 私も「ヤクザは貧乏して当たり前」という観念がどこかにあったので、振り込め詐欺に加担した事も触った事もない。そもそも性に合わなかったのかもしれない。本当の意味での金の大切さは、特殊詐欺では決して学べないと思うのだが、如何なものであろうか。

 しかし、この容疑者、呑気に買い物しているところまでテレビで流され、それを観た時は背筋が凍る思いであったであろうな。




沖田臥竜
兵庫県尼崎市出身。日本最大の暴力団組織二次団体の元最高幹部。前科8犯。21歳から29歳までの8年間服役。その出所後わずか半年で逮捕され、30歳から34歳までまた4年間服役と、通算12年間を獄中で過ごす(うち9年間は独居)。現在、本サイトで小説『死に体』を好評連載中。