人を殺していないこと、指を詰めさせなかったことが誇りです
──現在の心境をお聞かせください。
高田 もちろん引退しても、いろいろ考えなくてはならないことはありますよ。ヤクザに対する弾圧も、今までで一番ひどい時代といえます。
でも、私には信頼できる二代目の嘉人(よしと)がいますし、恵まれていると思います。
そして、現役時代の自分が人を殺していないことと、一家の者に指を詰めさせていないことは誇りに思っています。
ヤクザとして、人を殺すことの恐ろしさは十分にわかっているつもりです。自分が殺したくなくても、殺さなければならないことだってあります。そうならずに済んだ私は運がよかったのです。
また、「指を詰める」ということには、大きな意味があります。ヘタを打って詰めるというだけではないのですよ。では、どういうことかというと......これから先は、本を読んでみてください(笑)。

滝行に励む髙田氏 YOUTUBEより
ヤクザも反省すべきところは多々ありますが、やはり弱きを助け、強きをくじくという「原点回帰」をして、周囲の者に生き方を示すことが大切だと思います。
──最後に、読者の皆様に一言お願いいたします。
高田 現在、憲法の改定が問題になっていますが、ヤクザには以前から人権などありませんでした。最近では、それがますますひどくなっています。
日本国憲法 第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。 第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
このような基本的なことが、まったく守られてこなかったのです。また、憲法だけではなく、仏教も「万民は平等である」と説いています。
願わくは私の行った善い行いの果報が、
この世のありとあらゆる存在すべてに行きわたり
自分を含めたすべての人々と生きとし生けるものとが
皆と共にあらゆるものに対しての慈しみの心を持ちつつ
自らが勤め励む道を日々絶え間なく進んでゆきますように

若かりし頃の髙田氏
これは、どの宗派でも読まれる廻向(えこう)文です。廻向文とは、自らの善行の安楽の果報を自分だけのものにせず、あえて自分以外の者たちにも廻し向けて、その幸福と安楽を願う事を意味していますが、現実はどうでしょうか。
読者の皆さんには、こうしたことをぜひ考えていただきたいですね。そして、次回作も考えていますので、これからもよろしくお願いします。(2015年6月25日公開)
(取材/文=編集部)