本当のヤクザを書けるのは本当のヤクザだけである
──まずは、今回の出版の経緯をお聞かせください。
髙田燿山(以下高田) 古希を前に癌が見つかり、療養に専念するためにヤクザ渡世を引退しました。昨年のことです。

現役時代は何かと気ぜわしい日々でしたが、引退後は自分の時間を持てるようになったので、書店に行く機会も増えました。書店で、ヤクザや愚連隊関係の本がたくさん出版されているのに驚いたのですが、内容はほとんどがデタラメなことにはもっと驚きました。ヤクザを冒涜したり、嘲笑したりするようなものまであるのです。ちょっと聞きかじった話を裏も取らずに書いているでしょうが、これはひどいと思いました。
そこで、ヤクザについて、自分で体験した事実を書いてみようと思い立ったのです。ヤクザのことは、ヤクザにしかわからないでしょう。
私は引退はしましたが、任侠の道を外れたつもりはありません。半世紀にわたってヤクザとして生きてきましたから、本当のヤクザとはどのような存在であるのか、私が語らねばなるまいと、パソコンに向かうことにしたのです。
──現役時代から、幕末の侠客・大前田栄五郎(おおまえだ・えいごろう)や平安時代末期から鎌倉時代にかけての武将・岡部六弥太忠澄(おかべ・ろくやた・ただずみ)などの評伝を手がけられてきました。
高田 栄五郎も忠澄も私の地元に縁(ゆかり)がある人物です。そして、何よりも侠(おとこ)として生きていますね。彼らや歴史について調べたり、書いたりするのはいい気晴らしになったので、現役時代も時間を見つけては調べていました。彼らからは多くのことを学びました。