封印された児童買春クラブの存在
そもそもYの死体を自殺だと見なすこと自体が異常だ、という説もある。
Yは頭からビニール袋をかぶった状態で椅子に腰掛け、その椅子の下に置いた七輪で練炭を燃やすことで一酸化炭素中毒死した、というのが警察の見立てなのだが、日本テレビが行った検証によるとこの方法ではビニ―ルが溶けてしまい、テント内は絶対、酸欠状態にならないことが明らかになっている。さらに火力の強い練炭に近くであぶられたにしては、死体にはもがき苦しんだ痕も傷もなく、もしも体内から睡眠薬が検出されなかったとしたら、自殺の可能性よりも、気絶させてからビニール袋の中に入れたと考えるほうが自然である、という声もあるほどだった(もちろん検死の結果は未公開)。
一般的に考えても、赤坂や渋谷といった東京でも有数の繁華街でおおっぴらに営業している売春シンジケートが、暴力団や外国人マフィアといったプロの犯罪組織のバックアップなしに経営されるとは到底、考えにくい。ましてや、売り上げの一部と思しき金が35億円も出てきてしまったアングラ風俗である。ただの新聞記者の息子にすぎない29歳青年Yひとりで運営できるはずがない。
この捜査の打ち切りを決めたのは、警察庁でもかなり上の人間であるようだった。というのも、この不可解な終結宣言にいちばん反発したのは現場の捜査員たちだったからである。私たち記者の取材に対し、「やってらんねえよ」と無念さを打ち明けてくれた現場捜査官も一人や二人ではない。
よほど義憤にかられていたのだろう、彼ら捜査官のうち何人かは、なんと顧客名簿に載っていた大物政治家やその秘書、財界の有名人やタレントたちの名前をマスコミにリークさえしてくれた。だが、残念なことに週刊誌記者レベルの調査では、ついに決定的な証拠は得ることができなかった。
しばらくすると被害者とされた少女たちの証言はもちろん、第一通報者であった花屋の店員の証言さえも、あたかも誰かから圧力を受けたかのように当初のそれと変わっていき、ついには取材すら受けてくれなくなってしまったのである。