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元極道の異色作家・沖田臥竜のニュース解説  「プロ」はニュースはこう読む!

「被害240件16億円の詐欺師グループのリーダー」の懐具合を元極道が推測する

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テレビ、ラジオ、新聞はかならずしも事実を報道しているとはかぎらない。それは「嘘」を伝えているということではなく、都合の悪い情報をあえて伝えないことで世論をある特定の方向に誘導しようとしている可能性もある、ということである。そこで過去に何度もテレビ、ラジオ、新聞で「報道された側」(笑)であり、報道と事実のギャップを身を持って知っている男でもある元ヤクザ、現在作家の沖田臥龍に、「ニュースの読み方」を指南してもらう!

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計16億円詐取のリーダー格か、詐欺容疑で男逮捕 TBSnews"i"(リンク

計16億円詐取のリーダー格か、詐欺容疑で男逮捕
TBSnews"i" (23日01:24)
 全国でおよそ16億円をだまし取っていたとみられる詐欺グループのリーダー格の男が、警視庁に逮捕されました。

 詐欺の疑いで逮捕されたのは、自称・会社役員の大川完容疑者(30)です。大川容疑者は去年10月、大阪府高槻市に住む女性(88)に対し、証券会社の社員などを装って電話をかけ、「株式の名義貸しは違法です。お金を払わないと強制捜査に踏み込みます」などと、うそを言って、現金250万円をだまし取った疑いが持たれています。

 大川容疑者は全国でおよそ16億円をだまし取っていた疑いがある詐欺グループのリーダー格とみられていて、電話をかける役の男らに指示を出していたということです。取り調べに対し、大川容疑者は「心当たりはありません」と容疑を否認しています。(後略)


いくら溜め込んだって刑務所じゃ使えないけどな


 16億円である。映画の制作費の話ではない。このウラ青年実業家がひっかけた被害の総額である。

 それにしても16億円とは恐れ入る。家賃10万足らずの賃貸マンションに住んでいる私のような庶民には、このウラ青年実業家がその16億円のうち、いくらくらい残せているのだろうかと他人の懐具合が気になる所であるが、実のところ、どうなのであろうか。

 共犯者が多いので、もちろん16億円まるまるため込んでいる訳ではないだろうが、それでも食うに困らないだけの金は残せているのではないか。しかも当分は塀の中の暮らしが続くので、無駄な出費がかからないしな。

 大体、留置場で月3、4万、拘置所で5万円くらいあれば、なんの不自由もなく暮らす事ができる。これから彼が長く収容される事になるであろう刑務所においては、留置場や拘置所よりもさらに購入物品が制限されてしまうので、散財したとしても月1、2万円が限界であろう。

 ただひとつ困った(?)事に詐欺などの容疑で逮捕されてしまうと、逮捕時に所持していた金は一時没収されるケースが多いので、シャバから誰かに金を差し入れしてもらうまでは困窮してしまうらしい。とはいえ、こんだけ金を持っていれば、すぐさま優秀な弁護士が留置場に参上し、後顧の憂いなきように采配してくれるか。

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写真はイメージです

 今回の事件を見ていてもそうだが、手を変え品を変え、振り込み詐欺は一向におさまる気配がない。

「そんなら、罪を重くしたるわい」と裁判所が厳罰化の方向に進んだ結果、懲役20年もの実刑判決を言い渡される振り込み詐欺犯もあらわれた(2010年に判決の下った戸田雅樹被告のケース)。このままいけば、ゆくゆくは振り込み詐欺の最高刑が無期もしくは死刑にまで辿り着いてしまう可能性も出てくるんじゃないか。

 しかも今の無期は実質的には終身刑を意味している。

 昔は15年や20年を無期の仮釈放の目安としていたが、有期刑が30年に引き上げられた事から、無期懲役囚は少なくとも30年は刑務所で暮らさなければならなくなってきている。それも、無事故無違反でだ。腹の悪い刑務官が懲罰にひっかけようと思えば実に容易く「不良囚」というレッテルを貼られてしまう。仮釈放の対象外にしようと思えばいくらでも出来てしまうのだ。

 なんとかそれをどうにかクリアーしたとしても、次にネックとなるのが身元引き受け人である。長期刑を過ごしている懲役は、ここでよくつまずかされていた。長い年月の道中に、身元引き受け人が亡くなってしまったり、心変わりしてしまったりすることがあるからだ。

 それでも、有期刑の場合なら保護会※1という受け皿が存在するのだが、無期の場合は保護会も引き受けたがらない。

 いくら途方もない財を手に掴んでも、一生塀の中だったり、もしくは身体ではなく命がかかるとなってくれば、呑気に「オレオレ、事故起こしちゃってさ~」とは言ってられないだろう。

 とはいえ現状では、それくらいのデメリットがなければ、振り込め詐欺を減らすことは難しいのではないか。




※1 保護会......仮釈放の際に必要な身元引受人が立てられない人が、その代わりに身元を引き受けてもらう団体。正式名称は「更生保護施設」



沖田臥竜
兵庫県尼崎市出身。日本最大の暴力団組織二次団体の元最高幹部。前科8犯。21歳から29歳までの8年間服役。その出所後わずか半年で逮捕され、30歳から34歳までまた4年間服役と、通算12年間を獄中で過ごす(うち9年間は独居)。現在、本サイトで小説『死に体』を好評連載中。