高齢化社会の悲しき現実

「86歳夫を殺害したとして85歳の妻逮捕 岡山・高梁市」FNNより(リンク)
またしても痛ましい事件が発生した。9日未明、岡山県高梁(たかはし)市で、85歳の妻が86歳の夫を撲殺したとして逮捕されたのだ。報道によると、「夫の生活態度を注意したら、怒って暴力を振るわれたから棒で殴った」というのだが、日常的に夫からの暴力はあったのかもしれない。
昨今はDVの被害に関する報道が増えているが、気になるのが高齢者の犯罪の増加だ。『平成26年版 犯罪白書』によると、高齢者の検挙人員は平成8年以降で増加傾向が著しく、25年は4万6243人とやや(前年比4.8%マイナス)減少したものの、なんと6年の検挙人員の約4倍に上っている。
「単純に人数が増えたということもありますね。『平成26年版高齢社会白書』によると、25年10月1日現在の高齢者(65歳以上の者)の人口は3190万人(前年3079万人)と過去最高です。総人口に占める高齢者の割合も25.1%(前年24.1%)にまで上昇しています」(弁護士のAさん)
つまり、国内の4人に1人は高齢者なので、人数が多ければ犯罪も増えるという計算だ。でも、お年寄りが殺人とは......。
「そもそも殺人や傷害事件の場合、被疑者と被害者の関係は約半数が『親族等』です。これは長年にわたる傾向で、ヤクザの抗争なんかよりも家族による殺人のほうが多いのです。介護や育児、受験に疲れたり、酒乱だったりなどのケースですね。さすがにおばあさんがおじいさんを撲殺するのはめずらしいですが、女性は暴力を振るわれてもずっと耐え続け、ある日急に『反撃』に出ることもありますから」(同)
長年連れ添ったパートナーに手をかけるのは、よほどのことがあったのだろう。これから裁判で明らかになるが、Aさんは「今後もこうしたケースは増える」と断言する。
「若い頃は世間体を考えてトラブルを避けていても、高齢になると子どもも独立していますから、タガが外れてしまうんですね。今までの鬱憤が爆発して、悲惨な結果になってしまいます。そうならないように、周囲のケアは不可欠なのですが......」
あの戦争を生き抜いたのに、最後は家族に殺されてしまうなんて、切ない。熱中症の孤独死も増えているし、みんなで周囲のお年寄りを見守ろう。
(取材/文=熊野水樹)

老後・高齢社会の問題は、若者にとっても笑ってはいられない喫緊の問題なのだ。