前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらい月形刑務所で服役中だった後藤武二郎は、ある日、たまたま目にした職業訓練募集の張り紙に深く考えず応募したところ、まさかの当選。住み慣れた北海道を離れ、九州は佐賀少年刑務所へ移ることになってしまった。
ここじゃ毎日が罰ゲーム
2013年(平成25年)7月19日
うるさい担当のオヤジには絶対ひと言も言わせまいと毎日気合いを入れて挑んでいるつもりなんだが、昨日の帰りにはオレの号令に元気がないとか注意され、今朝は今朝で整列した時の気をつけの際に「ゴトー、手は身体側につけろッ!」と名指しで言われ、俺の敗北記録はなお更新中である。
そんな中、本日も数学のテストが行われた。
なんでも技官が出張中で、今月29日にならないと出勤してこないため、過去問題も、テストに慣れるための課題すらも出してもらえない。そんなんでいいのかよ。
どんな感じで試験の問題が出題されるのか、どこをどんなふうに勉強したらいいのか、手探りのまま試験まで1ヶ月を切る形になってしまうのは、右も左もまったく分かっていない俺にとっては不安が募るばかり。
するとCADの指導補助(前回の訓練生の中から優等生が1人、今回の訓練生の身の回りの世話をしている)が、オヤジからの告知を発表した。
来週あたりに抜き打ちでCADの試験をするとの事。
教科書読んで勉強してんだろうから、全員がいい点取れなかったら「またずっと国語と数学のテストをやらせるからナ」とのこと。
おい、ちょっと待て! 国語だの数学だのテストとCADはまったく関係ないだろ!
それじゃあ何か、今、俺たちは毎日毎日罰ゲームの国語テストと数学テストをやらされてるわけか。
いい点取れなかったら基本からCADの勉強やり直させるぞって言うなら分かるけど、国語と数学やらせるからナっていうは違う気がするんだけどオヤジ、俺たちに試験を受からせる気があるの!?