前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらい月形刑務所で服役中だった後藤武二郎は、ある日、たまたま目にした職業訓練募集の張り紙に深く考えず応募したところ、まさかの当選。住み慣れた北海道を離れ、九州は佐賀少年刑務所へ移ることになってしまった。
そんなふうに思っていた時期が俺にもありました
2013年(平成25年)7月11日
昨日の今日で、背すじも伸ばし、行進もきっちりやって朝を乗り切ろうと気合いを入れたものの、点呼の時に「28!(=佐賀少刑での呼称番号)」これがハッキリしなかったらしく「ゴトーハッキリ言えッ!」と注意されてしまった。
ちくしょう。このクソ担当め。
これだけ神経集中してるのに、それでも来るか!
よし、望むところだ。俺にとってこの厳しさは絶対タメになるはずだから、今度こそキッチリやってやるって。
勝負だ担当クソオヤジ!と気合いを入れ、プラス思考に切り替えて出直すも......今日から数学のテストが始まってしまった。
もっとも苦手な分野だけに気が重い。
テストが配られた瞬間に思ったよ。もっと勉強しておくんだったなァ、と。
だって最大公約数ってなんだよ!? 最小公倍数つったってわかんねーよ。俺、数学の成績は1だったんだぞ。
しかしながら、これじゃないかって数を書いて出したら75点だった。
オレいけるんじゃね?と悪い性格ですぐ図に乗る。
そして手応えのあった2度目のテストは58点。
上がったと思うと落とされて、これが俺の現実なのだ。
......明日の第3回目のテストが返ってくるのが怖い。