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シリーズ 達人に訊け 第四回 青島克行

歌舞伎町の最新ボッタクリ事情を新宿区に事務所を構える弁護士の先生に聞きました!

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金さえ払わなければコッチの勝ち! ボッタクリ店の負け!


──根本的な解決法というものはないのでしょうか?

青島 根本的には、ボッタクリ店を検挙しやすくなるように条例を変えていければいいなと思っています。

──たとえば、どの条例をどのように変えるのですか?

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青島 現在の東京都のボッタクリ防止条例はざっくり言うと「料金を分りやすく表示しなきゃダメですよ」「お客さんに本当の料金と違う、安いと誤解されるような説明をしちゃダメですよ」「請求するときは、お客さんが迷惑に感じるような請求をしちゃダメですよ」という3点を店に求めるっていう条例なんですけど、「店から説明されてないこと」をお客さんが証明するのは難しいですから、どうしても話が水掛け論になりがちなんです。だから、たとえば「店は料金設定を事前に公的機関に届け出て、お客さんからも、この料金で了承しましたという一筆を取らなければ、あとでいくら請求しようが店の言い分は通さない」とかしちゃえばいいんですよ。

──お客さんから全員、一筆取るんですか!? それって難しくないですか?

青島 そうでしょうか。たとえば金融業者は渡すべき書類をお客さんに渡さなかったら、そのあとどんな主張もお客さんに対してできなくなりますよね。それと同じことですよ。

──......まあ、確かに。しかも請求される額は消費者金融よりボッタクリ店のほうが高かったりするわけですしね(笑)。

青島 あくまでそれは一例ですが、要するにお客さんを助けやすくするよう、警察官へ法的根拠を与えてあげればいいと思うんです。もちろんお巡りさんにもいろいろな人がいます。熱心な方もいれば、マニュアル通りのことしかされない方もいるでしょう。そのマニュアル思考のお巡りさんでも一応の対応ができるような条例改正が必要だと思うんです。

 ただ、もっと言っちゃえば、条例なんて変えなくったって、いまやってるみたいに交番までたどりついたお客さんを店側の人間から切り離して帰しちゃえばいいんですよ。私はそれをずっと昔から言ってたんですけど、ようやく最近そうなった。

──そういうことをして、ボッタクリ店のほうから警察が訴えられることはないんですか? 無銭飲食を幇助した、みたいな理由で。

青島 電車に乗っているときに、隣にいた女性から「私、この人に痴漢されました!」と言われたらどうなりますか? 駅員か鉄道警察のお巡りさんに連れて行かれて事情聴取されて、逮捕までされてしまう。ところが、被害者とされる女の人は、女性が嘘をつくわけないから、と帰されちゃうわけじゃないですか。だから痴漢冤罪が起こるわけなんですけどそれはさておき、それと逆のことをボッタクリの場合はお巡りさんがやっていたんですよ

──そうか! 加害者のボッタクリ店と被害者のお客さんという当事者同士の話し合いで解決しろと言っていたわけですもんね!

青島 そうなんです。ボッタクリ事件の場合、お巡りさんが被害者の言い分に肩入れするわけじゃないから冤罪は生まれないんですけど、そのかわり被害者は全員、見殺しにされているという。

 犯罪者を見逃すほうがいいのか、冤罪が増えるほうがいいのか、どっちがいいのかっていう問題があるんですけど、少なくとも痴漢の場合、被害者女性は証言するだけで帰れるんですから、ボッタクリ犯罪だって同じようにしてもいい。そもそも、被害者の言い分というのは、それ自体がひとつの証拠なんですね。だから「被害者はそう言うが、証拠がないから助けられない」というのは、おかしな話なんです。しかも、これだけ被害件数が集まって、店名までかなり特定されているわけですから、被害者の言い分を信じて処理することは警察としてはむしろ当然だし、あとからその処理が違法だと言われることはあり得ない──というのが私の考えです。だからお巡りさんには、今後も被害車をどしどし救っていってほしいですね。

──最後に、ボッタクリにあわない秘訣を教えてください。

青島 身も蓋もない話ですけれども、ひっかからない人はひっかからないし、ひっかかる人はひっかかるんです。オレオレ詐欺や投資詐欺もそうですけれども。ひっかかるモードに入っちゃってる人っていうのは、そもそも僕らの声の届く場所にいないんです。したがって、その人たちをどうやって救うかっていうのは本当に難しいです。

 一般論になりますが、日本中どこの繁華街に行っても、ボッタクリにひっかかる可能性は常にあると思っていたほうが、結果的にはひっかからないでしょうね。

──では、もしもひっかかったときに、傷を浅くする方法は?

青島 基本はもうここまでスマホやらなんやらが発達しているので、自分が取材記者になったつもりで堂々と録音録画しちゃえばいいんです。録音録画されている状況で嘘をつき続けることは、向こうもなかなかできないから。

 あとは、「結論は必ず後回しにする」ということです。土下座しても何をしてもいいから、とにかく払わないこと。ボッタクリ被害は、怖い思いをしたとか嫌な思いをしたとか傷つけられたとか、そういった精神的部分を別にすれば、お金を払いさえしなければ被害はゼロなんです。だから、とにかくお金を払わないっていうところで当日、どこまで頑張れるかが鍵です。

 残念ながらお金を払ってしまった場合、現金で払ってしまうと取り返すのは難しいですが、カードで支払ったのならカード会社と話し合って向こうが応じてくれれば被害がゼロになりますから、あきらめないで交渉することが大事です。ただ、気をつけて欲しいのは、ボッタクリに引っかかったら現金じゃなくてカードで払え、と言っているわけではないですよ。「10万円分、カードを切るからな」と言って、100万円分切っちゃう店も実際にあるので。

 ボッタクリ店の店員とやりあうのは怖いし、カード会社と交渉するのも面倒くさいことかもしれません。それでも、被害者のなかから、どれだけ戦う人が出てくるかというところがやっぱり大事なんです。個人的な人生の処世術としては「まあ、いいや」というのもありかもしれないんですけど、皆が皆、ありとあらゆる局面で「まあ、いいや」をやっていたら、いつまでも変わらないんです。とくに罪深いのは「勉強代」という言葉ですね。被害者からも警察からも「勉強代だと思って」という言葉がちょくちょく出てくるんですけど、そもそもこれは勉強代じゃなくて犯罪者にお金を渡してるっていう話であって、勉強代という言葉にすりかえちゃいけないと思います。


(取材を終えて)歌舞伎町というところは、ヤバい場所にさえ行かなければとても楽しく、とてもおもしろい街です。それは過去20年、新宿で遊んできたR-ZONE編集部が保証します! 賢明な読者の皆様におかれましては、今回の青島弁護士の話を有効に活用していただいて夜の歌舞伎町を満喫してほしいと思います。それではよい週末を!