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シリーズ 達人に訊け 第四回 青島克行

歌舞伎町の最新ボッタクリ事情を新宿区に事務所を構える弁護士の先生に聞きました!

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70分4000円のはずが106万円!!!


──いままで先生が聞いた話の中で、もっとも悲惨な実例とはどのようなものでしたか?

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写真はイメージです

青島 ボッタクリ店単独で悲惨な例というのはそんなになくて、交番対応とセットで悲惨が完成しているというのが大半なんですね。

 たとえば今年の3月にあった、70分4000円で飲み放題のところ、結果的に106万円支払ってしまったというケースもそのひとつです。これはまず会計で店員から62万円の明細を持ってこられた、というところから話がはじまります。

──いきなり62万円からですか。なかなかのロケットスタートですね(笑)。

青島 その後、警察に行って話をしようということになり、交番まで行く途中になぜか新宿駅の階段でもみ合いになって、店員と一緒に階段を何段か転げ落ちちゃったらしいんです。さらに言い合いをしているうちに東口交番からお巡りさんが2名到着してようやく話し合いがはじまったんですが、話し合いをしているうちに、どんどん店員の数が増えてきて、「無銭飲食だ」「こちらはケガをさせられた被害者だ」と囲まれちゃったらしいんです。その挙句、ある店員から「人をケガさせて絶対に許さない。びた一文まけずに全力でいくんで」とお巡りさんの目の前ですごまれて、その時点で被害者の方は心が折れちゃったそうです。

──え、ちょっと待ってください。お巡りさんの前でコワモテの店員に囲まれて、すごまれたんですか?

青島 はい。でも、これはまではまだ序の口で。このあと、その被害者の男性はお巡りさんの目の前で店員に土下座して謝罪させられるんです。

 さらに「お前はお巡りさんにも迷惑をかけたんだから、謝っておけ」と言われて、お巡りさんにも「ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」と何度も謝罪したらしいです。

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新宿東口の夕景(wikipedeiaより引用 リンク

 そのあとはコンビニのATMでキャッシングさせられて、それでも足りないからと店に連れ戻されて、クレジットカードを切らされました。 そして最後に店内でもう一度土下座をさせられて、ようやく店から解放されたそうです。

 この件は店員の逮捕まで行ったので、最終的にはカード会社も対応してくれて金銭的な被害はほぼゼロで収まったんですけど、自尊心が傷つくどころの話じゃないですよね。それも店の横暴によって傷つけられたというより、交番に行ったのに助けてもらえなかったというそのトラウマがセットになって、惨めさが完成してしまっているんです。店側から惨めな思いをさせられるっていうのは、ある意味、想定の範囲内ですからね。被害者の人が口をそろえて悔しがるのは「なんでお巡りさんが助けてくれなかったんだ」という点なんです。

 ただ、これを単純なお巡りさん批判で終わらせてしまっても、あまり意味がありません。僕ら全体に問題があるんだと思うんですね。確かに一部のお巡りさんには「これは料金トラブルだから、警察は対応しなくていいんだ」という思考停止にもつながりかねないマニュアル思考があったかもしれない。被害者からも、とことん戦おうとする人間はごく一部しかあらわれなかった。カード会社も怪しい加盟店と交渉するよりは、被害者に泣き寝入りをせまるような、ことなかれ主義なところがあった。その外側にいる僕らも、「ボッタクリの店になんか行く方が悪い」とか、「これだけ世間で騒がれてる歌舞伎町にわざわざ出かけていって、案の定ボッタクリに引っ掛かるなんてバカじゃないんだろうか」とか、その程度の認識しかなかった。でも、その全員が結束して戦っていれば、とっくに歌舞伎町のボッタクリ問題なんて解決していたと思うんです。

──なるほど、そのあたりが、先生がホームページに書かれていた『ボッタクリから見える日本』というところにつながっていくんですね。

青島 というか、そういう発見をして、それをおもしろがらないことには、自分のモチベーションがなかなか上がらないんです(笑)。これが仕事だったらいいんですけど、ほとんど手弁当でやってることなので、ときどき「......なんのためにやってるんだろう」と思っちゃうこともあるんですよね。