>  >  > もうすぐこの過ごしやすい北海道を出て夏の九州へ引っ越しだ
俺の、最後の獄中絵日記 第169回

もうすぐこの過ごしやすい北海道を出て夏の九州へ引っ越しだ

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


enikki_tobira.jpg


住み慣れたここを離れる日が近づき、少し後ろ向きな気持ちになる

2013年(平成25年)6月23日

さて、いざ職業訓練行きが決まって明日から工場へは行かないとなると現実感が増してくる。

本来はやりたいことができるのだから喜ぶべきなのだろうが、一抹の不安と後ろ髪引かれる思いがいくつかある。

1 このCAD技術科って訓練、勉強が苦手な俺でもついて行けるの? そもそもCAD自体よく分かっていないのに。
2 佐賀は少年刑務所。年寄りが俺ひとりじゃ参る。
3 やっと次の独居行きが決まっていたのに、訓練終えて月形に帰ってきたら、また初めからだ。
4 過ごしやすい北海道からわざわざ夏の九州へ。酷だ。
5 せっかく慣れてきたのに、また新入訓練からのうんざり感。
6 今月集会目前での移送。向こうで集会日が終わっていたら俺の大事なお菓子の日が今月パーになっちまう

と数え上げたらきりがない。

せっかくのチャンスだ、もっとポジティブに考えるべきだろう。

じゃあ、どこに期待しようか?

......う~ん、色々と考えてみたが、なかなか浮かばないぞ。

そこで、一番最初の、職訓の希望を出した時の気持ちを思い出してみる。

目の前にチャンスと思えるものが現れた。

指をくわえて見過ごすのか、とり合えず手を伸ばしてつかんでみるのか。

比べるまでもなく、そこはやっぱり後者だろう。

それで大ケガしたって、これまでのすべてをやり直すことになってしまったとしても、やってみるべきことなんだよネ。

それが必ず自分のためになると信じよう──今のところ、それしかない。


20150720.jpg