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その女が注射器を捨てるまで 第96話

全て告白した。覚醒剤を使って逮捕され、刑務所にまで入れられたことを。

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〜第四章まで〜
 シャブ中仲間の裏切りにより覚醒剤使用で再逮捕。体を治すためと連れられた先は精神病院だった。抗えば抗うほど「患者」扱いされ隔離病棟で大量の精神薬を投与される毎日。無気力化された日々の中で、自分の鏡を見るようなシャブ中患者に囲まれ、刑を受ける事でしかこのどん底から抜けられない事を悟った玲子は、刑務所での懲役生活を決意。そして二年二ヶ月に及ぶ刑務所暮らしを経て、とうとう仮釈放を迎えシャバに出たのだった。


<第五章11 告白>

全部話そうと決意した

 ときどきそうするように、その日もあたしたちは体育館からの帰りに、ファミレスに寄ってお茶をした。

 子供の友達が三人、その子たちのお母さんが三人、それにあたしたち母子を加えて、総勢八人。四人掛けのテーブルふたつに、子供と大人で分かれて座った。

 ママ友達の肩越しに、子供たちの座るテーブルが見えた。
 お腹とか二の腕とか、あごとかの肉づきを気にして、お茶だけで我慢するママたちとは対照的に、子供たちはここぞとばかりに甘い物にがっついていた。

 ホットケーキにメープルシロップを滴るほどにかけて食べるお友達。見ているだけで胸やけしそうなのに、子供たちにはそれがちょうどいいようで、フォークの先でぴしっとキレイな三角や四角を器用に切り出しては、口に運んでいた。

 あたしの子供はその隣で、これまた見ているだけでお腹いっぱいになりそうな、たっぷりの生クリームで飾られた背の高いチョコレートパフェから、どういう意図があるのか、フォークの先でチョコレートソースだけを慎重にこそげ取るようにして食べていた。
 化学実験でもするかのような真剣な眼差しで生クリームの山を見つめる我が子が、たまらなく愛しかった。

 流行りのアニメの話をしながら、それぞれの"遊び方"で注文の品と格闘する子供たち。あたしたち大人は隣のテーブルで、最近急に売れてきた若手俳優の話で盛り上がった。
 話の内容よりも、話すこと自体が楽しかった。

 でも、場が盛り上がれば盛り上がるほど、あたしの心はチクチク痛んだ。


 子供たちが甘い物を食べ終えて、話に集中するのを見計らって、ついにあたしは切り出した。

「みんなに話しておかないといけないことがあるんだけど......」

 ママ友達の視線が、あたしに集中する。
 鼓動が高鳴って、胸が苦しい。

 恐い気持ちもあった。

 でも、信じられるような気がした。

 ──この人たちになら、話しても大丈夫。

 信じたかった。

 刑事に裁判官、そして両親......たくさんの人たちに疑われ続けて、いつの間にかあたしまで、人を信じられなくなっていた。

 疑う癖がついてしまった。

 それをどうにかしたかった。

 そのためには、まず目の前の友達を信じること。

「あのね、いきなり変な話で申し訳ないんだけど、じつは、あたし......」

 東京でやってきたことを話した。
 出稼ぎに行っていただけではなくて、覚醒剤を使って逮捕され、刑務所にまで入れられたことを。

 子供たちには聞こえないよう、声を抑えて、何度も頭の中で練ったとおりに短く簡潔に、話した。

 話し終えて、少しの間があった。

 向かいの席のママ友が、口を開いた。


(つづく)



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口の中は乾き、なかなか言葉が出なかった...



(取材/文=石原行雄)


石原行雄 プロフィール
闇フーゾクや麻薬密造現場から、北朝鮮やイラクまで、国内外数々のヤバい現場に潜入取材を敢行。著書に『ヤバい現場に取材に行ってきた!』、『アウトローたちの履歴書』、『客には絶対聞かせられない キャバクラ経営者のぶっちゃけ話』など。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishihara-yukio/