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俺の、最後の獄中絵日記 第170回

身体ひとつでこの刑務所に来て、出る時には手荷物2つに増えていた

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


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いよいよ出発前日

2013年(平成25年)6月24日

残房っていうのは読んで字のごとく、朝、皆が工場をへ出役する際、ひとり舎房に残ることだ。

多くは出所を迎えた人だが、俺のように他の施設へ移送となる人、警察への逆送※1とか、まれに工場を移る人や作業拒否の人なんてのもいるネ。

この刑務所から出るパターンの人には、俺も含めて領置調べってのがある。

要するに自分の持ち物をすべてまとめることだ。

今回の俺なんて必ず職業訓練後にはここへ帰ってくるのだから、身の回りの必要なものだけ持っていくから残りはそのまま預かっててくれよ、と言いたいところなのだが、お役所仕事だからそうもいかないらしい。

この月形刑務所を出る際にはすべての荷物をまとめ、出所するのと同じ形で門を出る。

違うのは手錠に腰縄の警護つきで、また数時間後には入所手続きをするってことだ。

月形に来るときには荷物になるのが嫌で、できるかぎり身軽で来たにもかかわらず、いつのまにか手提げの荷物袋2つになっていた。

まだまだ出所は先のことと思っていたから、服もバッグもなにも用意していない。

しかし、そのへんはオシャレでも見栄っ張りでもない俺は、あまり気にはならないところかナ。

領置調べが終わると、旧舎である3棟1階の出口に近い1室に入れられた。

やっぱり1から3の旧棟は汚ねェなァ。

独居だが、スチームや水道の配管までむき出しで狭い。

まあ明日は移送のようだから一日の辛抱だけど、万が一帰ってきた時、元の工場に戻れず、この古い棟に入れられたら最悪だ。

まあ......それはないか......待てよ......刑務所ではハプニングだらけの俺、なにか嫌な予感もするなァ......。

まあいい、そうなったらそうなった時だ。

とりあえず明日から九州佐賀の旅、行ってくるよ。


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※1 逆送......刑務所の受刑者に余罪などが判明し、あらためて捜査や裁判が必要となったため身柄を留置場や拘置所に送られること。逆送致