〜第三章まで〜
覚醒剤を射ち始めて半年、ついに逮捕された玲子。留置場で倒れて入院するも体調も回復し、執行猶予をとりつけて再出発を果たしたかに見えたのだが...。親に見捨てられた玲子の一人暮らしを世話してくれた久間木だが、シャブ中の久間木にとっては所詮玲子もキメセクのオモチャでしかなく、またも玲子は警察に追われ「覚醒剤使用」容疑で再逮捕されることになるのだった。
<第四章16 決着>
審理再開、あたしは犯していない罪を認めた
裁判では、あたしは犯してもいない罪を認めた。
「精神病院に強制入院させられた事実が、覚醒剤使用の動かぬ証拠」という検察の意見を、弁護士は否定することができなかった。
早く決着をつけてもらいたかったあたしは、「もうどっちでもいい」と思いながら、やり取りを聞いていた。
話を聞いてくれないのなら、好き勝手に解釈してもらうよりほかにない。
公判の席で、母が見当違いの情状酌量を裁判官に願う姿も、暴れることなく黙って見ていた。
「前のときは私が冷たく当たってしまったために、娘が悪い仲間を頼ってしまいました。今度は、今度こそは、私たち親がしっかりと更生させますので......ですから、どうぞ、寛大な処遇をお願い申しあげます」
嗚咽で言葉を詰まらせながら、涙ながらに語る母も、結局、あたしの言うことを信じてはくれなかったわけだけれど、もう、それに抗議する力も残っていなかった。
審理はスムーズに進行して、再開してから三回目の公判で判決が下った。
懲役一年二カ月。
"再犯"なので、もちろん執行猶予はつかず、実刑。
逮捕されてから判決が下りるまで勾留されていた期間は、「未決通算」として判決の懲役期間から差し引かれるのだけれど、あたしに認められたのは、拘置所にいた九十日分だけ。
閉鎖病棟に閉じこめられた半年分は、「警察病院ではなく、また親の希望もあってのこと」だからと、未決通算としては認められなかった。
初犯時の懲役一年八カ月を足して、未決通算の三カ月を引いたら、刑期は合計で二年七カ月。
弁護士は、未決通算のことだけでも控訴しようと言ってきたけれど、あたしは一日でも早くケリをつけたかったから、控訴はしなかった。
一週間の控訴期間を黙ってやり過ごしてから、さらに十日後、あたしは窓に金網を張った水色の護送車に乗せられて、栃木の女子刑務所に送られた。
二年七カ月の懲役生活がはじまった。
(つづく)

私は全てを受け入れた
(取材/文=石原行雄)
石原行雄 プロフィール
闇フーゾクや麻薬密造現場から、北朝鮮やイラクまで、国内外数々のヤバい現場に潜入取材を敢行。著書に『ヤバい現場に取材に行ってきた!』、『アウトローたちの履歴書』、『客には絶対聞かせられない キャバクラ経営者のぶっちゃけ話』など。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishihara-yukio/