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俺の、最後の獄中絵日記 第144回

今回はおおごとにならなくて良かったけど......次回は死ぬね

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


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目の前でボヤが起きてるのに動じない先輩

2013年(平成25年)5月28日

俺たちの作業が早く進みすぎて、先を急かすような感じになっちゃったんだよ。

要するに溶接してる人のところまで行って、溶接したてホヤホヤのものを自分たちの作業台まで持ち帰って俺たち2人は作業をしてたんだけど、そのときオヤジが「1班、投薬ッ!」って声をかけてきたもんだから、作業中の相方の先輩をひとり残して、俺はオヤジのところへ行って薬を飲んだ。

薬を飲んで振り返ったらさ......、燃えてんだよ

だけど、先輩は何事もないように、湧き上がる煙の横で黙々と作業を続けている。

この先輩、自宅で火事が起きたら絶対に焼け死ぬ人だと確信したネ。

すごいよ、いくら溶接したてホヤホヤだったからって、離れたところに置いてあったウエスが炎上したんだぜ。

というよりオヤジに見つかった大変だよ。

あわてて手で押さえてみたけどブスブス火はおさまらず、熱くて押さえていられずに、「水道お願いします」とウエスを濡らすときの要領で消火しに行った。

気がついて下さいよォー!と先輩に言いたいところだが、先輩は「どうしたの」とキョトンとした表情。

この人は大物だと実感したけど、近いうち俺はこの人と2人で懲罰に行くかもしれない、という予感もしたね。

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