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俺の、最後の獄中絵日記 第143回

動物が身近にいるからって心が癒やされるとはかぎらない

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


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自分から刑務所に入ってくる奴ら

2013年(平成25年)5月27日

初犯で務めた昔の東京拘置所には敷地内に猫が住み着いていたが、その猫よりも大きなネズミもいて、初めて見たときはゾッとした。

古い南舎や北舎では床下にたくさんのネズミがいて、床板のすき間から夕食に出た鶏肉なんかを落としたら数匹ドタバタ奪い合う音が聴こえて、そのあと嫌な臭いが立ち込めたりした。

甲府刑務所の炊場工場での朝の日課は、ネズミ取りシートに張り付いて動けなくなっているネズミを殺して、生ごみとして捨てることからだったし、ときには舎房の天井をコウモリが飛んでいることもあった。

舎房の窓からは、カラスがハトを襲うシーンをよく見た。

府中刑務所の敷地内の池にはつがいのカルガモが住み着いていて、カラスに一匹ずつ殺されていく子供を毎年産んでいた。

俺たちが冬の寒い中を行進していても、このカモの親子が横切ろうとしてたら、風が吹こうが雨が降ろうが俺たち懲役は気をつけの姿勢のまま、このカルガモ親子が通路を渡り切るまで待つってんだから、どれだけ偉いんだよ。

あとは作業中に持ち上げた材料の中からヘビが落ちてきたこともあり、俺は生まれて初めて生きたヘビを間近で見た、なんてこともあった。

どこの刑務所にもあらわれる、この小動物たち────そして今朝、工場に向かって行進してゆくとき、通路の傍らに茶色の小さなネズミがいるのを見つけた。

この月形という、全国の刑務所の中でももっとも近代的な新しい建物でも、やっぱりネズミは出るものらしい。

コイツもいつか、行進している俺たちが手も足も出せないのを学んで、憎たらしいほどバカでかくなるんだろうか。

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