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俺の、最後の獄中絵日記 第136回

なんにもできない自分が情けなくて言葉につまる

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


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思いは文字だけじゃ伝えられない


2013年(平成25年)5月20日

たまたまのケガで病院に行ったら「あなたは乳ガンのステージ4。末期です」と言われたKちゃんの気持ちを考えると胸が痛む。

それ以上に、夫であるSの心中を考えると、言葉も浮かばない。

本当は直接会って、2人の様子を肌で感じて、自分がしてやれることを自然と思いつくのが一番だとわかってはいるのだけれど、それは叶わない。

Sは「Kちゃんに直接、手紙を描いてあげてくれ」と、SはKちゃんの免許のコピーを送ってきた。

それを使って、外部交通の許可を取ってくれ、ということだ。

許可が降りたので、手紙を書こうと思うのだが、こんな場所にいる俺が、人生で一番の問題にブチ当たり苦しんでいる夫婦に何を言ってあげられるっていうのか。

書いては破り、破っては書くが、どう書いても結局、他人事だと言われそうな安い言葉しか出てこない。

これほど文才のない自分を情けなく思ったことはない。

だけど気持ちは伝えたい。

決して他人事なんて思っていないと。

俺の家系もガンの多いこと、お袋も大腸ガンで入院したこと、そして俺もまたシャバの検診で肺ガンに引っかかったまま結果知らずのこと、周囲にもガンの人が数人いること、そしてその人たちすべてが激闘の末、ガンを克服していること......。

うまく伝えようとか、勇気づけようとかもうどうでもいい。気持ちのままに書くことにした。

気丈にふるまうKちゃんに、本当に苦しいときは、Sだけには弱いとこを見せてもいいんじゃないかって......。

今の俺は手紙を書くことしかできない情けない男だが、シャバに帰ったら必ず力になってやりたいと心から思ってる。

その日までがんばってくれ、S、Kちゃん!

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