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俺の、最後の獄中絵日記 第128回

湿っぽい話

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


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あぶなくバックの中身が全滅


2013年(平成25年)5月12日

雑居にいると悩まされるのが部屋の結露の問題だ。

棚の上もノートも便箋もしんなりして、ティッシュはウエットティッシュになる寸前。

薬の糖衣錠も周囲が溶け出すほどに室内は湿気が上昇する。

窓の結露を雑布で拭き取るのは毎朝の日課で、壁を伝ってカビが繁殖する。

7人部屋に4人で生活していてこれなのだから、人間の発汗とはすごいものがある。

最近まで朝晩15分間、空調が入っていたのだが、その時はいっさい窓は曇りもせず、タオルもすぐ乾いていたのだから、このエアコンってのも偉大だ。

枕元に置いてある私物のバックから新しいタオルを取り出しても湿っぽく、本のページも湿ってめくれない。

窓から一番遠い俺の所まで壁の結露はやってきて、バックの中にまでその魔の手を伸ばしているのだ。

気がついて良かった。

バックの中身が全滅するところだった。

休日の今日は、いつの間にか壁を黒く汚していたカビを拭き取る作業を全員でした。

驚くほど壁は白くなり、部屋も明るくなった。

ということは知らないうちに広がったカビの中に今までいたのだ。

まあ、甲府や府中では8人部屋に8人いたから結露もすごくて、結露用として毛布が別に支給されていたほどだったから、それと比べたらここ月形は被害の大きさも悩まされる期間もずっと小さいのだし良しとしよう。

それにしても、このノートもずいぶん湿っぽいけど大丈夫かネ。


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