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その女が注射器を捨てるまで 第67話

「シャブ射ってやるとどれくらい気持ちいいんだ?」刑事の質問は露骨だった

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〜第三章まで〜
 覚醒剤を射ち始めて半年、ついに逮捕された玲子。留置場で倒れて入院するも体調も回復し、執行猶予をとりつけて再出発を果たしたかに見えたのだが...。親に見捨てられた玲子の一人暮らしを世話してくれた久間木だが、シャブ中の久間木にとっては所詮玲子もキメセクのオモチャでしかなく、またも玲子は警察に追われ「覚醒剤使用」容疑で再逮捕されることになるのだった。


<第四章④ 露骨な尋問>


シャブセックス


 ほとんど眠れずに迎えた翌日の取り調べも、あたしの話を聞いてもらえないという点では、前日の取り調べと同じで、あたしにはまったく意味のないことだった。

「前の男のときもシャブを射ってからしたことあるんだろ?」

 今回の尿検査で陽性反応が出たことと、まったく関係のない話だ。

「そんなこと、話す必要ないですよね?」

「それはこっちが判断することだ。あるのかないのか、おまえさんは聞かれたことに答えればいいんだよ」

「結婚するつもりで一緒に暮らしてたわけだから、注射するとかしないとかは関係なく、そういう雰囲気になればセックスしたって普通ですよね?」

 あたしは覚醒剤を性的な目的で注射したことはなかった。
 ミツオがどうだったかはわからないけれど。

 でも、そう話しても、刑事は理解してくれなかった。

「そうは言っても、射ってすれば気持ち良かったんだろ?」

 まるでセクハラ。でも、刑事は真顔で聞いていた。

「なぁ、シャブを使ってセックスをすると、どう違うんだ? 使わないでするのと比べて」

「知りません」

「前の男とは使ってたんだろ? そのときはどうだった?」

「比べながらやったりしないから、知りません!」

「それで病みつきになったんだろ? 覚醒剤を使ってするアレが」

 だから久間木とも一緒にシャブを使っていたって言いたいの?

「そんなの映画とかドラマとかの話じゃないんですか? ミツオと一緒に射ってたときも、それでセックスが良くなったなんて感じませんでしたから!」

 思わず声が大きくなった。

「だから、本当にあたしは使ってないし、知らない間に塗られてたんです!」

 あたしが嘘をついているとしか思えないのだろう。刑事も脅すように語気を強めた。

「おい! 本当はわかってたんだろ? シャブを塗られてるのも、わかってて気づかないふりしてたんじゃないのか?」

 落とし穴に突き落とされたような気分がした。

"どん底"だと思っていた有罪判決の下に、それよりも深くて暗い底なしの穴が口を開けていたなんて......。

「久間木に確かめてよ! それでぜんぶ、はっきりするでしょ!」

 顔にかかった髪の毛が、ほほに張りついた。
 手で払うと、涙を吸って湿っていた。

 悲しさを感じる余裕もないのに、あたしはいつの間にか泣いていた。
 本当のことなのに、まったく信じてもらえないのが悔しかった。

「昨日話したことが本当にぜんぶですから。それをちゃんと聞いて、ちゃんと調べてくれないなら、ほかに話すことなんてないですから!」

 興奮からつい立ち上がると、待ち構えていた警官に、即座に左右を固められた。

 そのまますぐに房に戻されて、その日の取り調べはお開きになった。


(つづく)



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自分でもよくわからなかった...



(取材/文=石原行雄)


石原行雄 プロフィール
闇フーゾクや麻薬密造現場から、北朝鮮やイラクまで、国内外数々のヤバい現場に潜入取材を敢行。著書に『ヤバい現場に取材に行ってきた!』、『アウトローたちの履歴書』、『客には絶対聞かせられない キャバクラ経営者のぶっちゃけ話』など。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishihara-yukio/