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その女が注射器を捨てるまで 第66話

刑事は私がキメセクの虜だと信じて疑わなかった

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〜第三章まで〜
 覚醒剤を射ち始めて半年、ついに逮捕された玲子。留置場で倒れて入院するも体調も回復し、執行猶予をとりつけて再出発を果たしたかに見えたのだが...。親に見捨てられた玲子の一人暮らしを世話してくれた久間木だが、シャブ中の久間木にとっては所詮玲子もキメセクのオモチャでしかなく、またも玲子は警察に追われ「覚醒剤使用」容疑で再逮捕されることになるのだった。


<第四章③ キメセク>


信じた人の裏切り

 刑事はあたしの訴えには答えずに、質問を返してきた。

「おまえさん、かなり射ってたんだろ? だったら知らずに塗られてたって、効いてきたらわかるんじゃないか?」

 あたしが話している間、なにを聞いてたの?
 聞いてるふりをしてただけ?
 どういうつもりで黙っていたの?

「本当は久間木と一緒にやってたんだろ? 前のときみたいに」

 ミツオのことだ。
 振るわれた暴力のことを思い出して、ほんの一瞬、強い吐き気を覚えた。
 強烈な怒りが鋭く立ち上がってきて、鼓動が異様に高まった。首の付け根がビクビクと脈動し、目眩のようなものがした。

「前の男ともシャブを使ってセックスしてたんだろ?」

「ミツオで本当に懲りたから、だからシャブとはすっぱり手を切ったんでしょ!」

「そう言ったって、何度だって捕まって戻って来るんだよ」

 そして、あたしを煽るように、刑事は言った。

「だからさ、まずは本当のところを話せよ」

 ミツオに対する怒りに、話を聞こうともしない刑事や、シャブを盛った久間木に対する怒りが混じり合って、首や腕の筋肉をブルブルと震わせた。

「これ、取り調べでしょ? だったら、ちゃんと話を聞いてよ! 真実をはっきりさせてよ!」

 事務机に身を乗り出した。
 注射痕のない腕を見せつけたかった。
 でも、あっという間に見張り役の警官に取り押さえられた。
 羽交い締めにされ、壁に顔や胸を押さえつけられながら、なにかで手首を殴られた。
 痛みに驚いて腕を振り回そうとしたら、手錠で拘束されていた。

「もういいよ、戻しといて」

 スーツの刑事が制服警官にそう言うと、あたしは背中を乱暴に突かれて、取調室から押し出された。

「ちょっと! ちゃんと話を聞いてよ!」

 叫び続けたけれど、背中を押されてつんのめるようにどんどん廊下を進んでしまい、監房に戻された。

「まだ話は終わってないでしょ!」

 叫ぶように訴えると、後ろからついて来ていた刑事が、曲がったネクタイを直しながら、冷たい視線で、

「そんなに興奮してたら取り調べにならないだろうが」

 吐き捨てるように言った。

 その晩は、容疑者と決めつけられたことや、信頼していた久間木に裏切られたことによるショックと怒りで、いつまでも眠りにつけなかった。

 ──助けて!

 あたしは心の中で母に求めた。

 突っ張って縁を切ったつもりでも、やっぱり母に頼っていた。


(つづく)



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何を訴えてもシャブ中の話は信じてもらえなかった...



(取材/文=石原行雄)


石原行雄 プロフィール
闇フーゾクや麻薬密造現場から、北朝鮮やイラクまで、国内外数々のヤバい現場に潜入取材を敢行。著書に『ヤバい現場に取材に行ってきた!』、『アウトローたちの履歴書』、『客には絶対聞かせられない キャバクラ経営者のぶっちゃけ話』など。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishihara-yukio/