前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。
刑務所から受刑者へ、こんなものがもらえるんだよ
2013年(平成25年)6月2日
刑務所に到着してから新入工場を経て、最初の6ヶ月がすぎると、"半年無事故章"というのがもらえる。
ここ月形刑務所では、四角い黒地に白の一本ラインの入ったものだ。
これを左の腕に付ける。「私は優等生です」っていうマークみたいなものだ。
おそらくは刑務所の歴史をたどると戦争中の軍隊に行き着く部分もあることから、勲章のようなものなのかもしれないネ。
さて、無事故章、次の6ヶ月も無事故で過ごすと1年無事故ということで、白の一本ラインが白のVラインに変わる。
さらに、1年半なら V ラインと、まっすぐの二本線になるといった具合だ。
では、この無事故をがんばってやり通した人に対しての刑務所側からの褒美は、このバッチの他になにがあるのかというと、毎日夕方6時から入るテレビの電源が月に一度だけ5時半から入るというだけのもの。
この月に一度の30分のテレビ視聴時間......、しかももっとも面白い番組のない5時30分......、この恩恵を受けるためにがんばって無事故章を勝ち取ろうとする懲役がいると思うのか。
いるわけねーだろ!