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シリーズ 達人に訊け

とびっきりタフでレアな現場を探して

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結局、危険なのは世界中どこでも一緒

──どう違うんですか?

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こちらは別の爆弾テロ現場。紛争地帯は爆発や発砲に事欠かないネタの宝庫だ。

石原 ざっくり言えば、きっちりこちらへ銃口が向いていたら本気。銃身がぶれたりしながら漠然とこちら側へ向いているだけなら、単なる威嚇。あと、トリガー(※注:引き金)に指がかかっているか、トリガーガード(※注:安全のために引き金をぐるりと囲む金属の輪)の外へ指が出ているかどうか。トリガーにかかっていたら当然、撃つ気満々だし、外れていればまだ威嚇段階だなって。

──そんな悠長に見分けてる余裕なんてあるんですか?

石原 そこは、こっちだって真剣ですよ。そういうときって神経が研ぎ澄まされているから、パッと見て本当に一瞬で読み取れたりする。

──でも、それって賭けじゃないですか?

石原 いやいや、判断材料はほかにもたくさんありますよ。相手の肩の筋肉に力が込められていないかとか、片眼をつぶって本気で照準を合わせにきてるかとか。そういうのを一瞬で読み取って、瞬時に判断してるんだと思います。

──じゃあ、ホントにヤバいのはどんな状態ですか? 「こいつはマジで撃ってきそうだ」っていうのは。

石原 片眼できっちり狙いを定めて、銃口が完全にこちらをロックオンしていて、しかも指はトリガーにかかってる......こういう相手はさすがに緊張します。

──そういう場合、どうするんですか?

石原 とにかくゆっくりホールドアップして、あとは絶対にピクリとも動かない。で、ボディチェックでも何でも、相手が納得するまで微動だにせず好きにやってもらうしかない。

──聞くだけで冷や汗がにじんできますね。日本が銃のない国でホントよかった。

石原 いや、日本でも似たようなことはみんなもやってると思いますよ。

──はい? やってるわけないじゃないですか? マシンガンなんてドラマや映画でしか見たこともないですよ?

石原 いやいや、たとえばケンカのときとか、ナイフを振り回すバカが時たまいるじゃないですか。

──いなくはないですね。

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ビル内部もバンカーバスターという特殊弾で、完全に破壊されている。

石原 そういうとき無意識のうちに、全身全霊で相手のことを観察して、次の出方をものすごい処理スピードで真剣に考えてたりするじゃないですか。「こいつは本気で刺してくるのか? それともチラつかせてるだけなのか?」とか。「やり合うならあそこに落ちてる石を拾って......」とか、「逃げるならこっちの方向へ......」とか。そういうときってみんな、相手の目つきとか、刃物を握る腕のリキみ具合とか、あるいは軸足に体重がかかっているのかとか、そういうのを瞬時に読み取って判断してるんじゃないですかね。

──そうかも知れませんね。

石原 結局、戦時下のイラクだろうが、北千住の飲み屋街だろうが、やってることは変わりないんですよ。危険地帯の潜入取材だからって、何も特別なことをやってるわけじゃないんです。

──でも場所によっては、現実に命を落としてるジャーナリストもいるわけで......。

石原 それは話を最初の登山に戻すと、過酷な冬山でもしっかり準備をすることで、大半の人は無事に下山するわけですよ。でも、準備が足りなかったり、油断したりナメてかかったりしていると、標高の低い夏山でも遭難や死亡事故になったりする。

──油断が一番の敵ってことですか。

石原 クルマやバイクもそうでしょ。運転に慣れてきたと思った頃が一番事故りやすい。「自分はけっこう運転が上手いんじゃないか」なんて思いはじめたときがね。

──警戒心や注意力がゆるみますからね。

石原 まあ、そういう意味では、したり顔で「俺は戦場をわかってるぜ」みたいなことを語っちゃってるようだと、俺も次あたり危ないのかも知れませんけどね(笑)。

──マジで気を付けてくださいよ。笑ってる場合じゃなくて。

石原 これが俺の遺作になるかも知れないから、この本は是非みなさんに読んでいただきたいですね(笑)。

   

(取材/文=山井健真)