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その女が注射器を捨てるまで 第76話

ついに私は鉄格子のついた病室に隔離された

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〜第三章まで〜
 覚醒剤を射ち始めて半年、ついに逮捕された玲子。留置場で倒れて入院するも体調も回復し、執行猶予をとりつけて再出発を果たしたかに見えたのだが...。親に見捨てられた玲子の一人暮らしを世話してくれた久間木だが、シャブ中の久間木にとっては所詮玲子もキメセクのオモチャでしかなく、またも玲子は警察に追われ「覚醒剤使用」容疑で再逮捕されることになるのだった。


<第四章13 強制入院>


そして閉鎖病棟へ

「ここなら医師も看護師も二十四時間体制で待機してるから安心ですよ。悪いところはすべて治すつもりで、腰を据えてじっくり治療しましょうね」

 宣告が下るとすぐ、あたしは両親や弁護士と引き離された。

 拘置所の係官もその場に残り、あたしだけが病室に移動するように言われた。

 水色がかった白衣を着た二人の若い男性に左右を挟まれるようにして、エレベーターで上の階に移動した。

 ──でも、この男の人たち、看護師じゃないかも。

 ブゥーンと低く唸る狭い箱の中で、妙な胸騒ぎを覚えて、息苦しくなった。

 エレベーターが停まって、扉が開き、箱から出る。と、廊下の先には大きな鉄格子。

 胸騒ぎは的中した。

「ねぇ、ここ閉鎖病棟でしょ!?」

 振り向くと、エレベーターの扉はすでに閉じていた。
 反射的に逃げ道を探して、周囲に視線を走らせる。すると、白衣の男たちに左右それぞれの腕を掴まれた。

「ちょっと、やめて!」

 抗議を無視して、男たちはあたしを鉄格子の向こう側に運んだ。
 あまりの驚きに、もがいて抵抗することもできず、あたしはあっという間に病室に運ばれた。

 二十畳ほどの病室には八床ものベッドが並んでいて、そのほとんどにはまだ夕方の早い時間にもかかわらず、寝ているのか起きているのかわからない人たちが、なにをするでもなく転がるように横たわっていた。

 窓に目をやると、そこにもがっしりとした鉄格子がはめ込まれていた。留置場や拘置所よりも窓が大きい分だけ、鉄格子も太く大きくて、禍々しいものに映った。

 また騙された......。

 窓の鉄格子を見て、全身から力が抜けた。
 抵抗する気力も失せていた。

 拘置所から持ってきた私物のバッグを、白衣の男がひとつのベッドの横に置いた。

 あのベッドであたしは暮らすのか。

 あたしは男の指示を待たずに、無言で服のままベッドに上がって、横になり目をつぶった。

 精神病院の閉鎖病棟に強制入院させられた。その現実と向き合いたくなくて、部屋の中のなにもかもを見たくなくて、あたしは静かに目を閉じた。


(つづく)


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もうここから出られないかもと思った......(写真はイメージです)


(取材/文=石原行雄)


石原行雄 プロフィール
闇フーゾクや麻薬密造現場から、北朝鮮やイラクまで、国内外数々のヤバい現場に潜入取材を敢行。著書に『ヤバい現場に取材に行ってきた!』、『アウトローたちの履歴書』、『客には絶対聞かせられない キャバクラ経営者のぶっちゃけ話』など。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishihara-yukio/